これまでの研究において平成29年告示の学習指導要領解説技術・家庭編で示されている生物育成の技術における課題設定の在り方として,収量増加のための技術を取り上げ,その技術のメリット・デメリットに迫ることが重要であることが明らかとなった。また収量増加を主課題とし,加えて環境,経済,社会などの技術の見方・考え方を働かせた副課題を設定することが効果的であることも明らかとなった。これら主題材および副題材の設定における教材として,コムギ・オオムギの容器栽培とジャガイモの袋栽培の施肥試験を行った。またこれら結果を用いた教材を検討し,コムギ・オオムギの試験結果を用いた課題設定導入教材を作成した。本教材は試験結果をスライド資料にまとめたものとし,授業の中で肥料を与えるタイミングや量に着目させ,より効率的な栽培方法を思考させるものである。加えて,経済性や環境負荷等へも思考が発展するよう構成した。本教材を用いることで生物育成の技術の(1)-アの内容を踏まえることとなる。この時,肥料の種類,量,タイミング,回数を考えることで技術の見方・考え方を働かせ栽培における課題設定に至ることができる。生徒の実態においても追肥のタイミングが分からないと回答した生徒が多く,これまで意識してこなかった作物の栽培について技術の視点および技術の見方・考え方を働かせ生活や社会の中から課題を見出すことができる教材となり得ると考えられた。 また,課題設定時に利用する教材としてカードゲーム型教材を作成した。本教材は生徒間の対話を通じて,農薬の使用や農薬が果たす役割,メリット・デメリットについて理解できる教材である。授業実践については,COVID-19の影響により班活動が制限されたため,オンライン版教材作成によって課題設定時の有効性について検証を行った。カードゲーム型教材のオンライン版でも同様の効果が得られることが明らかとなった。
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