本研究は,科学技術の社会的課題について,生徒が主体的な議論によって意思決定・合意形成を図り,多様な価値観とのバランスに配慮しながら対話・協働によって社会の在り方を「共創」する授業を行うための,教材の開発と教師用解説書の作成,およびこれらを指導できる教員養成について検討することを目的としている。 (1)「教師用解説書(初版)」の作成 2022年度は,生殖補助医療の社会実装に向けて,多様な価値観とのバランスに配慮しながら,生徒間の対話・協働によって「共創」する授業を行うための教材冊子「生命倫理について考えるコンセンサス会議-生殖補助医療編-」を,多くの教員が有効に活用できるように前年度に作成した「教師用解説書(試行版)」の改良を行った。具体的には,教職課程の学生に,教材冊子を用いた授業を担当するにあたって,教材冊子だけでは不明・不安な点を挙げさせたものを集約し,過去の実践データの分析から得られた,順序等をわかりやすくするための適切なガイド,教員が配慮すべき事項に,教職課程学生が挙げた不明・不安な点を解消するための情報を加え,整理したうえで改良版を作成した。改良版を理科教育学会で発表し,発表時に得られた改善点や助言等をもとに修正して「教師用解説書(初版)」とした。 (2)教材冊子「脳死による臓器移植の今後を考える(シナリオワークショップ)」の作成 これまでは,テクノロジーアセスメントの手法の一つであるコンセンサス会議を活用した教材を作成してきたが,別の手法であるシナリオワークショップを用いて教材の開発を行った。過去の実践から有効性があきらかになっている,脳死による臓器移植を題材にしたシナリオワークショップの授業を,多くの教員が実践できるように汎用性を高め,教材冊子「対話・協働で『共創』する科学技術社会の未来-脳死による臓器移植の今後を考える(シナリオワークショップ)-」を作成した。
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