研究課題/領域番号 |
20K13984
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
勝田 光 筑波大学, 人間系, 助教 (30792113)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リーディング・ワークショップ / ライティング・ワークショップ / ブック・クラブ / 典型的な国語の授業 / リテラシー・センター / 長編小説を読む活動 / 手引きのある指導 / 知識の習得と創造的活動 |
研究実績の概要 |
本年度は、大きく分けて、3つの作業を行った。 1つ目は、一昨年度実施したアメリカの幼小中高等校学校におけるフィールド調査で収集したデータを分析・考察し、学会で発表し、その後、査読付き学会誌で論文を出版したことである。論文では、(1)リテラシー・センター、(2)長編小説を読む活動、(3)手引きのある指導、以上3つの国語科では馴染みのない指導法を取り上げて分析し、(1)読み書きを学ぶ方法について、生徒が選択する機会を作ること、(2)教材や介入の程度について、生徒の読み書き能力を踏まえること、(3)知識・スキルの習得を目指す学習と創造的な言語活動との関係について、熟考すること、以上3点をアメリカのリテラシー教育が国語科に与える示唆だと結論づけた。 2つ目は、日本の典型的な読むことの授業の源流を1915年に芦田恵之助が「冬景色」を教材として行った授業に求め、その意義と批判を検討し、国際学会で発表したことである。 3つ目は、軽井沢風越学園に全11回訪問し、澤田英輔教諭によるリーディング・ワークショップ、ライティング・ワークショップ、ブック・クラブなどの指導法を用いた国語の授業を観察し、データを収集したことである。また、直接訪問した調査だけでなく、感染症の拡大による長野県蔓延防止の期間、オンラインによる澤田教諭と生徒のカンファランスや生徒の自主的なブック・クラブに同席し、観察・記録を行った。生徒がテーマを選択して読み書きを学ぶ重要性を示す事例、自分が読みたい本を選んで読む個人読書だけでなくグループで同じ本を読む学習の重要性を示す事例、教師が個の読み書き能力に応じて即興的に指導方法を変えることの重要性を示す事例など、本研究課題の核心に迫る貴重なデータが十分に収集できたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
リーディング・ワークショップというアメリカで開発された指導法を探る上で重要となるアメリカでの実地調査の成果について、全国大学国語教育学会という国語教育の中心的な学会の査読付き学術誌で発表することができた。 また、こうしたアメリカの指導法を国語科教育に導入する上で、そもそも国語科における典型的な読みの授業がどのようなものか、考察することが欠かせない。この点について、過去の文献に当たり考察を行い、国際学会で発表することができた。 さらに、研究課題に直接関わるリーディング・ワークショップの日本における実践について、軽井沢風越学園に勤務する澤田英輔教諭の国語の授業を定期的に観察することで貴重な一次データの数々を入手できた。また、感染症の拡大による長野県蔓延防止の期間は、オンラインによる授業も観察し、データを入手することができた。これは、当初予定していなかったことだが、本研究を進める上で非常に良かったと考えている。 以上より、今年度は、学会発表、論文出版、文献調査、フィールド調査による一次データ収集など、バランスよく研究を進めることができ、当初の計画以上に進展させることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、大きく分けて、2つの作業を中心に行う予定である。 1つ目は、今年度、国際学会で発表した、典型的な国語の授業について、質疑応答の結果も踏まえて論文執筆を行い、査読付き学会誌に投稿、論文出版することである。 2つ目は、今年度実施した軽井沢風越学園におけるフィールド調査で収集したデータを整理・分析し、学会発表と論文執筆の準備を進めていくことである。その過程において、研究協力者である軽井沢風越学園の澤田英輔教諭とオンラインで討議も重ねていきたい。 また、これらの作業を進めていく中で、国内外の関連文献に広く当たり、研究の裏づけを確かなものとするようにしたい。
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