研究課題/領域番号 |
20K13996
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
丸山 広人 放送大学, 教養学部, 教授 (50418620)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生活場面面接 / 動機づけ面接 / 来談者中心療法 / 負の理想自己 |
研究実績の概要 |
児童生徒の中にはいわゆるカウンセリングとは異なり、話を傾聴してもらうというだけでなく、自分の良さや肯定的な側面に気づいたり、自分の行いを振り返って新しい目標を見出すといった対話を求めている者も少なくない。納得感に焦点づけて上手に説得してもらうことを求めているともいえる。児童生徒が、変化への動機づけを高めるためにはどのようなアプローチをすればよいのかということが課題となる。 本研究では、児童生徒がどのようになりたい自分を見いだすのかという点において、理想自己の観点から検討を進めた。その結果、こうなりたいといった理想の自己には正と負の二つの側面があるということからアプローチすることが有効であることを見出した。 正の理想自己というのは、こうなりたい自分という側面であり、なりたい理想像がはっきりしている。正の理想自己が明確な児童生徒に対しては、その理想を明確にして具体的な行動目標に向けた対話が納得感を高めやすく、教師の対応はこのような児童生徒には適合しやすい。一方、児童生徒の中には、こうなりたい自分という正の理想像を思い描けない者も少なくない。このような児童生徒に対しては、負の理想自己に焦点を当てることが納得感を得られやすいことも明らかとなった。負の理想自己とは、ああなりたいというのではなく、むしろああはなりたくないという自己像であり、そこから距離を離す方向に向けた対話が有効である。ああはなりたくない自分と現状を比較して、そこから離れているためにはどうすればよいかといった方向から考えた方が納得感を得られやすい児童生徒もいる。負の理想自己に対しては、教師にとって盲点であり、むしろスクールカウンセラーの行う傾聴や現状を肯定するという方向の対話の方が適合することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
あと3回ほどインシデントプロセス法を実施する予定であったが、新型コロナウィルスのため人を集めての新たな調査が難しかったことに加えて、研究代表者の所属変更に伴う業務の過多もあり新たな調査を実施できなかった。しかしこれまでの結果を分析しつつ、文献調査及び臨床実践に基づいて研究を進めてきた。今後は、文献調査や心理臨床実践を通しての調査及びこれまでの調査を分析することが必要となる。
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今後の研究の推進方策 |
(1).主に教師が行う児童生徒との対話に説得力を持たせ、児童生徒の納得感を高めるための面接として、動機づけ面接や生活場面面接の技法の観点を整理し、学校場面に落とし込んで具体化していく (2).児童生徒との相談場面をいくつか想定し、その場面での納得感に焦点づけるための観点を理解できるテキストを作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
人を集めての研究ができず、学会もオンライン開催が多くなり、想定していた金額が発生しなかったため未使用額が生じた。今後は対面開催の学会も増えてくる予定であるので、予算を執行する予定である。文献調査に切り替えざるを得ないためそのための予算も必要となっている。また、研究最終年度であるため、報告書の作成する費用も必要となる。
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