本研究は、ESDの資質・能力(コンピテンシー)と社会系教科固有のコンピテンシーを結び付けて育成をめざすドイツの統合型社会系教科カリキュラム、教科書や教材の分析、現地調査・授業見学を通じて、①ESDのコンピテンシーと社会系教科固有のコンピテンシーの関係性、②ESDのコンピテンシーと社会系教科固有のコンピテンシーを一体的に育成するためのカリキュラム編成・学習設計の原理を解明するとともに、③日本の中等社会系教科におけるESD実践のためのカリキュラム・授業モデルを提案するものであった。 最終年度である2023年度では研究成果の公表に重点を置き、研究活動を実施した。国際学会では日本の中学校社会科地理的分野の学習指導要領にみるESDの特徴を報告し、また日本の社会系教科を中心とする学術雑誌を対象としたESDに関わる研究成果と課題を調査した論考を『レリバンスの構築を目指す令和型学校教育』に掲載するなど、日本の社会系教科におけるESDに関わる研究を中心に成果報告を実施した。さらに、現職教員を対象とした研修・研究会の場において、ESDに関わる講演「高校社会系教科と持続可能な社会づくり―知る・わかる・創るを視点とした授業アイデア」を実施し、研究成果の学校現場に向けた発信も行った。 4か年の研究期間を通じて、主に①、②に関わる研究成果を学術雑誌や書籍、国内外の学会で報告をし、また現職教員を対象とした研修会等での4回の講演を通じて学校教育に対する直接的な成果の還元も行った。なお③については、実践モデルを書籍等に掲載したものの、①、②に関わる研究と比して数が少ないことから、本研究課題終了後も継続して研究・成果を公表していく予定である。また2023年度中に得られた研究成果の一部については現在、国内外の学術雑誌に投稿中ないしは投稿予定である。
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