研究課題/領域番号 |
20K14012
|
研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
新井 美津江 立正大学, 社会福祉学部, 特任准教授 (50866275)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 実践的知識 / 数学を教えるための知識 / 教師の職能成長 / 小規模研修 |
研究実績の概要 |
2021年度は前年度同様に、数学教師の日常の授業における実践的知識の様相を明らかにするために、実践的知識の概念枠組みを用いて事例研究を行った。11月下旬数学を専門とする小学校教師の授業、12月上旬から中旬に数学を専門としない経験年数が5年未満と10年以上の教師の授業、2月中旬に数学を専門としない初任教師の授業を参観し、授業前と授業後のインタビューを行った。 その結果、教師のこれまでの学びの経験が影響を及ぼしていることが明らかになった。例えば、教育学部数学科専攻の教師は大学時代の学びの方法が、教科書を分析することが多かったため、教科書とは異なる素材を設定する場面が多くみられた。また「指導法に関する信念」が多く表出された。一方数学を専門としない経験年数の浅い教師は「指導方法に関する知識」を同僚の授業を参考にしたり市販本に紹介されている方法を取り入れ実践している。経験年数の多い教師は同僚からの学びが多く「内容と指導方法に関する知識」が多く表出した。事例研究であるために、これらの結果を一般化することはできないが、教師の学びの機会、習得方法を分類化することができると考える(分析途中)。 また、実践的知識の概念枠組みから捉えることができた実践的知識の生成のメカニズムについては、既有の知識に新しい知識が加わることはないが、知識の再構成(recasting)がおこっていることを記述した。加えて、すべての学びが教師の資質能力の向上につながるものではない事例もあり、誤った知識の更新をいかになすべきかという課題が残った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、実施できなかった「経験年数5~10年教育学部他教科専攻」の教師を対象とした調査を含め、すべて行うことができた。以上で計画した事例研究はすべて終了した。 ただ、実践的知識の概念枠組みの修正に取り組み、分析に時間を要している。その結果論文として発表できていない現状から「おおむね順調」との判断となった。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの事例研究から、実践的知識の生成の際に既有の知識の再構成(recasting)が行われることがわかった。今後は知識の再構成を促す小規模研修(日々の活動のサイクルに位置づいた学年単位の短時間で行える研修)の在り方を模索する。 まず、再構成を促す教師の「気づき」について先行研究から理解を深める。次に2022年度は埼玉県内の小学校に協力を要請し、複数校で小規模研修を実施する(実施校は調整中)。調査方法は、(1)授業ビデオ視聴による学び、(2)参加者の授業ビデオ視聴による学び、(3)授業計画時の話し合いによる学び、においてどのような学び「気づき」があるのか、特徴と差異を明らかにしていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
国際学会がオンラインで行われたため、予定した渡航費を使用することがなかった。
|