研究課題/領域番号 |
20K14012
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
新井 美津江 立正大学, 社会福祉学部, 特任准教授 (50866275)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 教師の知識生成 / 実践での教師個人の学び / 集団での教師の学び / 知識生成の偏り |
研究実績の概要 |
2020年度2021年度は、教師の日常的な活動(計画・実践・省察)における教師個人の知識の変容を捉えた。2022年度前半はそれらの分析を継続して行った。その結果、教師の知識生成は、実践の中である特有の状況(子どもや他教師からの外的刺激)の下で起こることがわかった。後半は教師個人の学びと集団での学びの関係を把握するため、既存の校内研修における教師の学びの現状を把握した。 まず、校内研修における小グループでの授業検討会の様子を記録し、若手教師が何をどのように他教師から学ぶのか把握した。次に若手教師の学び(大学・初任研・校内)に関するインタビューを個別に行い、それぞれの学びの背景や傾向性を捉えた。更に研究授業学習指導案作成場面において助言を行い、若手教師や先輩教師の気づきについて考察した。 結果(考察途中)は次の通りである。①小グループでの授業検討会では若手教師の発言は極端に少なく、先輩教師の話を聞く態度が多く観察された。若手教師の学びは少ないと推察される。②個別インタビューで明らかになったことは、学びの場として他者からの助言、他者の授業を参観、指導案作成場面が挙げられる。③また学びの内容は、主に指導方法(板書の仕方、支援の仕方、まとめの仕方など)に偏り、内容の知識やカリキュラム知識に関することはほとんどなかった。しかし、研究授業作成場面では、内容に関して疑問が出され知識に対する気づきが観察された。 現在調査結果を分析している途中であるが、教師の知識生成に偏りがあることが浮かび上がっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年目の本年は、計画通り校内研修での学びに関してデータを収集することができた。参加した学校現場では、先輩教師と若手教師の学びの質と学び方が異なっていたため、計画にはない若手教師のみを対象として個別インタビューを行った。そのことにより、学ぶ対象が算数をどのように教えるか(内容と指導法)や板書の仕方やチョークの使い方(指導法)など偏りがみられ、内容を深く捉えるなど授業力の向上の基盤となる学びが乏しいという問題点を示すことができた。これらの知識は算数を専門としない初任研担当教員のアドバイスや視覚的に捉えやすい授業参観により生成されたものである。またこのような教師の学びに関する問題点は、本研究の最終目的である小規模研修の在り方を模索する上で、一つの視点を与えてくれると考える。つまり、教師の内容に関する深い学びが起こさせるための学びの場を考察する必要があることを気づかせてくれた。調査結果では、指導案を作成する場において、若手教師が先輩教師の学級を借りて事前授業を行う際に先輩教師に深い学びが起こったり、授業を修正する際に若手教師の内容に関する気づきが観察されたりした。 以上のように、教師の学びの問題点の顕在化と小規模研修の在り方への示唆を得られたことにより「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針は、まず教師の内容に関する深い学びの場を構成する際に不可欠な要素を明らかにする。次にそれらの要素を取り入れた小規模研修を実施し、通常の校内研修と比較して教師の学びの質の違いを明らかにする。 これまでの調査結果より深い学びの場に不可欠な要素として次の4点がある。①他の存在(子どもの理解の認識・他者からの助言・他者との対話)、②課題の共有、③同様の立場、④意思決定する実践の場。これらを取り入れた小規模研修を小学校で実施する。 具体的には、経験年数でグループ分けを行い(③に対応)、グループでディスカッションを行う(①に対応)。授業実践ビデオを鑑賞し(②に対応)、子どものある特定の様子から教師はどうすべきか問い(①④に対応)意見を交換する。 以上のような研修を行い、どのような知識の生成が起こるのか明らかにする予定である。そのために研修前後の質問紙調査により、授業実践ビデオに関する既有知識、知識の生成を促した他者の言葉や考えを把握する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、国際学会での発表に参加できず、渡航費用として計上していた額を使用できなかった。 2023年度はイスラエル(ハイファ大学)での国際学会の参加費用、渡航費に使用する。また質的データ分析のためのソフト(NVivo)を購入する。
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