これまでに、アンケート調査で、教員の体育に関する力量が高くない教員は、小学校低・中学年の体つくり運動系の「体ほぐしの運動(遊び)」と「多様な動きをつくる運動(遊び)」の指導に対して、困り事の認知が高く、行政作成資料や研究会が作成した資料は使用しておらず、「体を移動する運動(遊び)」を除き様々な基本的な動きを取り上げにくいと考えていることが明らかにしている。さらに、比較調査から、「体つくりの運動遊び」の授業における体育授業場面、身体活動量、基本的な動きの習得状況について検討した。その結果、熟練体育教員の学習指導場面の時間が長く、一般教員のマネジメント場面が長く、身体活動量は、一般教員のSBが有意に高く、熟練体育教員のMVPAが有意に高いこと、熟練体育教員クラスの男子は、一般教員クラスの男子よりも基本的な動きの習得が進んでいたことを報告している。 最終年度では、これらの結果をもとに、単元計画、言葉掛け、マネジメント方略、言葉掛けやマネジメント方略に関する映像資料を掲載した指導資料を作成した。そして、体育に関する力量が高くはない教員による作成した指導資料を用いた「体つくりの運動遊び」の授業と、比較研究で対象とした熟練体育教員の授業を対象に、体育授業場面、身体活動量、基本的な動きの習得状況について比較した。その結果、マネジメント場面に差異はなく、学習指導場面の時間は一般教員が長く、MVPAは一般教員が高値を示した。一方、基本的な動きの習得は、性に関係なく、単元後に熟練体育教員クラスの児童の方が基本的な動きの習得が進むことが明らかになった。 以上の研究知見を踏まえ、作成した指導資料を、体育に関する力量が高くはない教員の体育授業を支援する方途のひとつとして提案することが可能となった。
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