研究課題/領域番号 |
20K14016
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
野原 博人 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (70844108)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 能動的な学習 / 認知能力 / 非認知能力 / 思考の可視化 / 成長的思考態度 / 科学概念構築 |
研究実績の概要 |
本研究は,理科教育における現代的課題解決と連動した授業研究を通して,能動的な学習の実現に向けた教授・学習論の基礎理論の構築を目的としている。令和2年度は,本研究の初年度となるため,理科教育における現代的課題の分析と能動的な学習の実現に関する先行研究の精査から行った。さらに,授業事例の調査を研究協力校へ依頼し,理科授業における能動的な学習の実現を視点とした教授・学習過程の分析を行った。授業実践の分析結果を研究協力校と共有し,本研究が志向する理科授業デザインを構想する要素について検討した。具体的な研究業績の概要は,以下の通りである。 1.能動的な学習の実現に関わる先行研究から,学力形成に関わる「認知能力」と「非認知能力」の融合的な育成について精査した。 2.小学校第4学年「雨水の行方と地面の様子」単元における問題解決の過程から,「予想・仮説の立案」と「考察の共有に基づく結論の導出」場面に焦点を当て,科学概念の構築過程を分析した。授業実践の分析においては,授業における教師と子どもの発話,予想や考察における子どもの記述から,子どもの思考・表現の内実を明らかにした。 3.上記2,における分析結果から,子どもの思考を可視化する教授・学習方略は科学概念の構築において有用であることを明らかにした。また,思考の可視化には,非認知能力に関わる能力の育成が関与していることを明らかにした。 4.小学校第6学年「水溶液の性質」単元における子どもの概念変容の過程を分析した。学習内容の系統性を視点として,授業実践の分析を行なった。分析結果から,「成長的思考態度」に関わる要素が能動的な学習を実現する理科授業に寄与することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度に予定していた研究内容は,先行研究の精査,授業事例の調査分析,授業デザインの構想と立案,授業分析の視点の検討と設定,研究協力校との共有であった。このうち,先行研究の精査に基づく授業事例の調査分析に関しては,口頭発表により公表し,さらに詳細に分析を進めている。授業デザインの構想と立案については,授業実践の分析を行いながら検討しており,若干の遅れが生じているが,残りの研究期間全体の進捗状況から,現在の時点では問題は生じていない。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は研究内容における構想に重点をおいた。次年度以降は,実践,分析を中心に研究を推進していく。具体的には,研究協力校における授業実践の収集と整理,分析を重ねていく。コロナ禍における学校現場への介入に課題があるが,今後も研究協力校との授業実践の録画や子どものノート等の記述等のデータ収集や研究内容の共有,検討などをより円滑に進めていく計画を立案している。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた謝金の使用がなかっためである。次年度以降は,授業実践記録等のデータ収集を目的とした旅費が当初予定より必要となることが予想される。また,研究協力校ならびに研究協力者が必要とする最小限の物品・消耗品を購入が必要となる。 物品・消耗品については,精査した上で購入する。また,研究発表や研究協力校におけるデータ収集等に必要な旅費は当初計画より増額し,研究目的に合わせて執行する。なお,次年度予定している論文投稿に関わる投稿料に充当する予定である。
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