本研究は,理科教育における現代的課題解決と連動した授業実践とその分析を通して,能動的な学習の実現に向けた教授・学習論の基礎理論を構築することを目的としている。令和5年度は最終年度であり,本研究が志向する授業デザインの検証から追試を行い,授業デザインの再検証をした。具体的な研究業績の概要を以下に示す。 1.理科授業における可視化を方略を措定し,小学校第6学年「もののとけ方」対象とした授業実践をその分析により,学習効果を分析した。 2.理科授業における動機づけに関わる自己決定理論に基づく授業デザインを行った。授業実践とその分析から,共同体における学習者の動機づけと本研究が志向する授業デザインの関連について明らかにした。 3.上記1,2における授業実践とその分析結果では,自己調整学習を構成する「メタ認知」や「動機づけ」は,本研究が志向する「拡張的学習による理科授業デザイン」を駆動する重要な要素であることが明らかとなった。 また,令和5年度は本研究の最終年度であるため,本研究が志向する能動的な学習を支援する教授・学習論として「拡張的学習による理科授業のデザイン」の体系化,精緻化を図り,メタ認知,動機づけといった自己調整学習に関わる要素が本研究が志向する授業デザインに深く関与することが明らかになった。また,本研究が志向する授業デザインの実現は,認知能力,非認知能力の育成に寄与することが明らかとなった。 平成29年告示の学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」の実現による授業改善が求められている。その授業改善の具体的な事例について,本研究が志向する授業デザインを示すことができた。能動的な学習を支援する教授・学習論として提案した「拡張的学習による理科授業デザイン」は,今後の授業改善を促進するための有益な視点の提供が期待できる。
|