研究課題/領域番号 |
20K14041
|
研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
菱田 一仁 京都先端科学大学, 人文学部, 講師 (70817246)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 留学生 / 精神健康 / 適応 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は留学生のメンタルヘルスに関する調査を行うことである。特に留学生が留学を志した理由についての検討を行うことを目的としていた。また、研究実施計画においては、留学生を対象としたインタビュー調査を行ったうえで質的な分析を行うことを計画しており、新型コロナウイルスの影響で予定よりは遅れているものの、その計画に沿って調査は進行している。 その中で本年度は、昨年度に引き続き留学生のメンタルヘルスに関してインタビュー調査を行った。特に、これまでの研究においては、留学先での孤立や適応などを中心とした検討が行われてきていたが、留学以前のメンタルヘルスに関して質問を行った。実際には、留学中のメンタルヘルスについて質問をする中で、母国では精神的な問題を感じていたことはなかったか、それは留学を志したことと関連があるか、という点について質問を行いデータを得た。 また、録音した音声をすべて文字起こしし、それをデータとして用いて質的に分析を行った。質的な検討の結果、実際に日本の大学に留学をしている人を対象とした調査においては、一定の数の学生が留学以前から母国でも精神的な問題を抱えていたことが明らかになった他、一部の学生においては母国での精神的な問題が留学を志す直接の原因になっていることが分かった。これは、研究者が当初想定していた仮説を裏付けるものであると考えられる。 現在は質的な検討を行い、その内容を客観性を持たせるための精緻な分析を行うと同時に論文の執筆を行っているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
特に2020年度には主に新型コロナウイルスの影響で留学生の入国が制限されていたこと、またオンライン面談などが一般的でないなどインタビュー調査を行うための環境が整っていなかったことなどによって調査研究自体の開始がかなり遅れてしまった。特に2020年度など新型コロナウイルスの影響が大きかったころには、大学のキャンパスに学生が来ていない、キャンパスには来ていても人の集まる場所には来ないなどのことから、インタビューへの協力者を募ることが難しかった。 また、2020年度などでは、特に留学生のメンタルヘルスの影響について考える上で、新型コロナウイルスの影響が大きいことがいくつもの研究によって報告されており、結果においても新型コロナウイルスの影響を考慮することが必要になると考えられたことから、行動制限や学生に対する精神的な影響が少し落ち着いてから調査を行おうと考え、調査開始が予定よりも遅くなってしまったことも影響している。 2021年度の後半になり、新型コロナウイルスに関連した行動制限などが改善する中で、新型コロナウイルス自体の精神的な影響ばかりが強調されてしまうような環境が変わったと考えられたことから、インタビュー調査を開始し、その後はやはり人が集まる場所での調査協力者を募ることが難しかったことから、予定よりは少し少ない人数になってしまったもののインタビュー調査を行うことが出来たため、進捗はしていると考えられる。ただ、調査開始が遅れたことから、進捗は当初の予定よりは少し遅れてしまっている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在は、インタビューで録音した音声をすべて文字起こしをして、質的な分析を行っている段階である。基本的には分析はできているものの、客観性を確保するための手続きなどを今後進める必要がある。 また、それと同時に現在論文の執筆を行っており、2023年の夏をめどに論文としてまとめて国際誌に投稿することを予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、2020年度からインタビュー調査を開始し、国際誌への投稿を予定していた。しかし、実際には新型コロナウイルスの影響が大きく、調査研究の開始自体が予定よりも大幅に遅れてしまい、開始時点で1年半程度の遅れが生じてしまった。その後、調査自体は開始し、予定よりも少し少ない人数ではあるとはいえデータを収集することが出来たものの、全体的に予定が後ろ倒しになっている。 次年度使用額は、基本的に論文の校正や国際誌への掲載料としての使用を予定している。
|