本研究は、緊急・災害発生時における自閉症スペクトラムの特性を有する子どもとその保護者への支援について検討することを目的とする。東日本大震災後の東京電力福島第一原子力発電所事故(以下、原発事故)による避難等を経験した自閉症特性のある子どもの保護者を対象にインタビュー及び質問紙調査を実施し、発災時や避難の際に役立つ支援の在り方及び、自閉症特性の重症度等も踏まえた避難所等で活用できる支援ツールについて検討する。 今年度は、インタビュー調査を実施し、その結果を踏まえ発達の偏りや遅れのある子どもの保護者及びその支援者に対して自閉症特性と緊急・災害時を想定しての支援ニーズに関するアンケート調査を実施した。 インタビュー調査は、保護者16名に対してzoomを用いたオンラインで実施した。結果は、会話記録を文章化した後、カテゴリ化を行った。カテゴリは、大きく7つに分けられ、最もコメント数が多かったのは、自閉症特性による特有の避難所等での困り感や役立った支援に関する「障害特性と避難時の困り感」であった。自閉症特性は共通するが、その内容は個々で異なる点が特徴的であった。次いで「普段の生活にみられる自閉症特性」であり、保護者が子どもの特性について客観的に捉え理解し対応している様子がみられた。また、「障害の有無を問わず乳幼児期に共通する避難所での支援ニーズ」では、夜間の避難所で静かに過ごすことが難しいため情報を得るために24時間テレビがついている部屋があって助かった、離乳食がないためパンや菓子を水分を浸して食べさせた、一緒に避難している大人の人数が多いことで情報や物資を得やすかったなどのコメントがあった。 質問紙調査は、療育機関を利用する子どもの保護者(94名)に実施した。その結果については、現在解析途中である。
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