研究実績の概要 |
本研究では、国内外で児童生徒の問題行動予防効果が実証されている「学校規模ポジティブ行動支援(SWPBS)」における「データに基づく意思決定」システムを、日本の学校現場に実装することを目指している。 研究成果として、児童生徒の問題行動データを収集・分析するアプリを開発して学校現場で実際に活用してもらい、そのユーザビリティの検証を行った。本アプリの使いやすさやグラフ分析機能については高い評価を得た。ただし、本アプリと既存の校務支援システムが分かれていることによるデータ入力作業の煩雑さについて、改善の要望が複数寄せられた。この課題への対応として、2022年度中は本アプリに各教職員が問題行動データを直接入力するよりも、紙ベースで記録を蓄積してそれを担当教員もしくは支援員がアプリに入力する形を試行した。今後は、既存の校務支援システムと本アプリの統合を検討していく必要があると考えられる。 また、SWPBSの実行度(必要な要素を実装できている程度)を測定するツールである日本語版Tiered Fidelity Inventory(日本語版TFI; Algozzine et al., 2014)の改訂作業を原版作成者と連携して行い、2022年度中に改訂版を複数の学校で活用した。学校現場からは、改訂版のほうが以前よりわかりやすく・活用しやすいとの評価を得ることができた。この日本語版TFIを活用することによって、SWPBSの実行度を数値化することができ、SWPBSの実装をより効率的に進められるようになった。さらに、「データに基づく意思決定」を会議中に適切に行えているかを得点化するための評価尺度であるDecision Observation, Recording, and Analysis-II (DORA-II; Algozzine et al., 2015) の翻訳も行うことができた。
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