本研究は、自閉スペクトラム症(以下、ASD)児を対象に、日本の学校場面において実施可能なセルフモニタリングアプリを開発し、その効果を明らかにするとともに、効果が促進される手続きを検証することを目的とした。 研究1は、小学校の自閉症・情緒障害特別支援学級(以下、自情学級)担任2名を調査協力者とし、セルフモニタリングアプリの使用感の調査を行い、学校で実施可能なセルフモニタリングアプリを開発した。調査は、調査協力者にデモ版アプリをインストールしたタブレットを貸与し、調査協力者が特別支援学級に在籍するASD児に対してアプリを2週間使用した。その結果、デモ版アプリに関するデザイン、システム、機能について概ね肯定的な評価を得た。調査後、研究代表者は、企業とアプリの最終調整を行い、令和4年4月にアプリをストアに無償公開した。 研究2は、研究1で開発したセルフモニタリングアプリを用いた支援の効果を検証した。対象児は、小学校の自情学級に在籍するASD児1名であった。標的行動は、算数の授業におけるプリントへの課題従事行動であった。支援は、アプリをインストールしたタブレットを用いた。その結果、アプリを用いた支援によって、対象児の課題従事行動の向上が確認された。 研究3は、セルフモニタリングアプリを用いた支援に関して、対象児にとって効果的な手続きをアセスメントした。また、それに基づく支援の効果を検証した。対象児は、小学校の自情学級に在籍するASD児1名であった。標的行動は研究2と同様であった。手続きは、注意のセルフモニタリング手続き(集中しているか否か)と成果のセルフモニタリング手続き(何問解けたか)を用いた。その結果、対象児にとって、成果のセルフモニタリング手続きのほうが、課題従事行動を向上させることが確認された。 最終年度は、研究成果の一部を国際学会で発表した。また、論文投稿に向け、執筆を行った。
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