• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

自閉スペクトラム症の聴覚における敏感性と鈍感性の神経基盤の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K14057
研究機関豊岡短期大学

研究代表者

渡辺 隼人  豊岡短期大学, その他部局等, 講師(移行) (40815982)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード聴覚情報処理 / 自閉スペクトラム症 / 脳磁図 / M100 / N100m
研究実績の概要

定型発達者(健常者)の聴性誘発磁場(M100)のデータは概ね収集を完了した。
1.M100は注意を向けない状況でも出現するとしばしば報告されるが、定型発達者においてはあまりに音圧が低く(音が小さく)、他に注意を向ける対象がある場合、出現しないこともある。この状況であっても自閉スペクトラム症を持つ人(特に聴覚過敏がある場合)ではM100が出現する可能性があり、M100をバイオマーカとして利用するための条件として利用できるかもしれない。
2.聴覚閾値(聴力)を勘案して充分大きな音圧で提示したM100において、研究実施者(渡辺)が既に報告した通り、特に左半球において周波数によって異なる強度が得られた。M100の潜時は自閉スペクトラム症のバイオマーカとして期待されているが、強度はあまり注目されておらず、新規かつ有用な知見である。特に、半球間での差が自閉スペクトラム症群の特徴である場合、潜時では標準データからの「遅れ」を考えなくてはならず、標準データの集積が必要であるのに対し、半球間の差は個人のみで比較可能な可能性があり、有用な結果である。
この成果はBIOMAG2022 (The 22nd International Conference on Biomagnetism)にて公表予定である(採択決定)。また、本研究から派生する成果として、定型発達者であっても自閉症スペクトラム指数(Autism spectrum Quotient, AQ)によって、コミュニケーション中の脳活動が変調することを見出した。この成果の基礎となる研究は43rd Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society(EMBC)にて既に発表している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

1年目に予定していた定型発達者の計測は、概ね完了した。予想された結果に加え、新たな結果(研究実績の概要「1」を参照のこと)が得られ、充分な成果と考える。
一方で、新型コロナウィルス感染症の影響(感染症拡大予防、および自閉スペクトラム症を持つ方の外出忌避感が強いこと)により、自閉スペクトラム症を持つ参加者の計測は困難であった。そのため、2年目に予定していた自閉スペクトラム症を持つ参加者の計測は控え、代わりにAQを用いた定型発達の個人差を測定し、この高低によって自閉スペクトラム症の傾向を推定するアナログ研究を実施することにした。少なくとも、自閉スペクトラム症の傾向によってコミュニケーション中の脳活動が変化することは確認したが、コミュニケーションのような明らかに自閉スペクトラム症が困難である状況ではない、単なる音の聴取時(本研究の設定)に明らかな差が生じるかは不明である。現在、このデータを収集し、解析を進めているが、このような理由から、2年目に予定していた「自閉スペクトラム症を持つ人との比較」についてはやや遅れている。

今後の研究の推進方策

【研究遂行の予定】新型コロナウィルス感染者数は未だに多い一方で、ワクチン3回接種者も増え、社会的な行動制限も概ね解除されてきていることから、自閉スペクトラム症を持つ方の外出忌避感も変化していると思われるので、改めて実験参加のお願いをして、可能であれば自閉スペクトラム症との対照実験を行う。
一方で、まだ参加が難しい場合も、AQや感覚過敏尺度を用いたアナログ研究を進め、少なくとも自閉スペクトラム症のどのような傾向(表出されるもの)が特有の脳活動と関連するのかの調査を進める。
【研究を遂行する上での課題及び研究課題の変更】当初の計画では、3年目には自閉スペクトラム症の神経基盤モデルを推定し、個人差の予測因子を決定することを目的していたが、現在新型コロナウィルス感染症による自閉スペクトラム症を持つ方の参加が難しく、データがほとんど収集できていないことから、実用に耐えるモデルの生成は難しいかもしれない。そこで、2年目の検討に合わせて研究実績の概要1で報告した、「充分小さい音」の提示に関するM100の出現の有無について、群間調査を行う。この調査結果が予想通り、定型発達者ではM100という形では出現しないが、自閉スペクトラム症群(特に聴覚過敏を持つ人)では明瞭にピークが見えるといった結果が得られれば、M100強度が自閉スペクトラム症のバイオマーカとして有用であることを補強する結果となる。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルス感染症拡大防止のため、国際会議への現地参加がなく、旅費の使用が出来なかったほか、実験参加者の募集も困難で、謝金の支払いが出来なかった。今年度は現地参加を行う予定の他、「小さい音」の検証のために高性能オージオメータのような、実験遂行の過程で必要性が明らかになった機材を購入する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 2021

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)

  • [学会発表] Modulation of M100 amplitude for tones of different frequencies at equal sound pressure level2022

    • 著者名/発表者名
      Hayato Watanabe
    • 学会等名
      The 22nd International Conference on Biomagnetism
    • 国際学会
  • [学会発表] Desynchronization in Alpha Band Rhythm during Exchanging Semantic Words―MEG Hyperscanning Study.2021

    • 著者名/発表者名
      Risa Anada, Hayato Watanabe, Hideki Shiraishi, Koichi Yokosawa
    • 学会等名
      43rd Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi