研究課題/領域番号 |
20K14058
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
江頭 優佳 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 知的・発達障害研究部, リサーチフェロー (10793200)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 注意欠如・多動症 / ADHD / 時間知覚 |
研究実績の概要 |
本年度は219名(ADHD50名(小児7名)、ASD26名(小児7名)、ASD・ADHD併存46名(小児6名)、定型発達群97名(小児18名))に対して3種類の時間知覚課題、実行機能検査、知能検査、発達特性検査を実施した。COVID-19感染症拡大の影響で所属機関外来受診の小児が減少したため、所属機関ホームページにて小児及び成人に対してリクルートした結果成人の参加者数が多かった。 成人被験者に対する検討の結果、併存群ではADHD群よりも時間認知の歪みが重篤で、外的時間の認識が正しく出来ない、または、外的時間と内的時間のズレを指摘されても修正出来ない可能性が示された。一方でADHD群では外的時間の認識には定型発達群との差はなかったものの、外的時間の再現にバラツキが大きかった。従ってADHDの時間知覚機能不全については、課題性質の影響による成績低下と区別する必要があることが示された。併存群では幼少期からの時間認知のズレが原因で「時間通りに行動できない」「決められた時間待てない」などの問題行動として表出し、過剰な叱責及び当事者の自尊心の低下につながり、二次障害リスクとなる可能性がある。今後、ASDで見られる自己認知不全や精神疾患傾向との関連を中心に検討を進める予定である。なお、本成果の一部は日本生理人類学会第82回大会にて口頭発表した。 発達障害群への検討に加えて、本研究では昨年度実施した文献調査の結果を踏まえて異なる認知基盤を持つと考えられる複数の時間知覚課題を同時に実施しているため、定型発達群の課題成績から時間知覚課題特性の類型化を検討している。 次年度は本年度の研究参加者に対して脳機能計測を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リクルート方法の変更により当初予定していた小児の研究協力数が見込みよりも少なかったため、精神疾患の併存がない小児への検討が不十分であること、参加者が既存の患者群ではないため行動実験への参加を通じて脳機能計測が可能かどうか(特に感覚過敏や閉所恐怖症の有無、多動‐衝動性の程度など)を判断する必要があり、脳機能計測の実施時期を遅らせたため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本年度の研究参加者に対して脳機能計測を実施し、課題成績との関連を検討する。特に脳構造や安静時機能的結合などを計測し、時間知覚機能に関連する脳の器質的・機能的特徴を把握する予定である。更に、小児と成人のADHDは異種性を持つことが示唆されているため、継続して小児の研究協力者を増やし、計測を実施する。現在、夏休みなど長期休みの期間前に所属研究機関周辺の住宅にチラシを配る、リクルート協力機関を増やすなど、小児の組み入れ数を増やすための取り組みを実施している。これによって本来の目的の達成に加え、小児と成人の比較が可能となり、計画時よりも幅広いADHD当事者への還元可能な成果が得られる可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた脳機能計測を実施しなかったため、研究協力者謝金額が変更になったため。次年度脳機能計測実施時に設備使用料及び研究協力者謝金として使用する予定である。
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