研究課題
個人・集団レベルにおける多様なリソースに基づく子どもの心理社会的環境要因に関する指標を整備するために、海外でも多く使用されている「Child and Adolescent Social Support Scale (CASSS)」の日本語版を作成し、小中学生1,068名を対象として、信頼性・妥当性の検証を目的とした調査を実施した。確認的因子分析および相関分析の結果は、CASSSが多面的なソーシャル・サポートを測定する尺度として、十分な信頼性・妥当性を有することを示した。上記の母集団とは異なる中学生334名を対象に、ソーシャル・サポートに加えて、ソーシャルスキルおよび情緒的・行動的問題に関する尺度を用いた調査を実施しており、さらには当該生徒の保護者を対象に、生徒の発達障害的傾向(ASD、ADHD)を測定する尺度を用いた調査を並行して実施している。本研究において、支援ニーズの高い生徒は、総じてソーシャルサポートの知覚が低い傾向にあり、特にクラスメイトから受けるサポートが最も抑うつ症状と関連することが明らかになった。さらに本年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、学校現場のニーズに対応する形で「新型コロナウイルス恐怖尺度(FCV-19S)」の日本語版や、オンラインゲームの使用状況(ゲーム内課金やギャンブル依存傾向を含む)について関する項目を追加した調査を複数の地域の中学校および高校で実施した。調査で得られたデータについては、既に解析が完了しており、一部は論文として掲載済みである。
1: 当初の計画以上に進展している
調査はすべて計画通りに進行しており、得られたデータを基にした論文は既に国際誌に投稿され、審査中である。また、当初の計画にはなかったが、コロナ禍による学校現場のニーズに応じて実施された追加調査についても、学術的価値を有するデータを集積できており、その成果として論文が投稿準備中であることから、今後の論文数の増加が見込まれる。加えて、学級の児童生徒をアセスメントするための尺度や予防的・発達促進的アプローチに利用可能な枠組みの整備を進めており、その成果の一部は既に論文として上梓されていることから、当初の計画以上に研究が進展していると評価できる。
ソーシャルサポートの緩衝効果を明らかにするための縦断的調査として、前年度の調査と同様のテストバッテリーを使用した調査を予定しており、その準備を進めている段階である。既に地域の複数の中学校および高校から内諾を得ており、学校現場と協働しながら本研究を進めていく。論文に関しては、既に投稿中、投稿準備中の論文が複数ある状況であり、引き続き公刊に向けた作業を行っていく。研究成果のアウトリーチとして、各学校現場においてはオンライン形式も選択肢の一つとして研修会を開催する予定である。
新型コロナウイルスの影響を受け、学会発表を予定していた学会が中止になったため、旅費に利用しようと計画していた予算に残額が生じた。次年度以降、中止となった学会にあらためて参加するほか、コロナ禍における影響を踏まえて変更した調査研究から得られたデータをオープンアクセスジャーナルに投稿する予定であり、そのための費用に充てる。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件)
カウンセリング研究
巻: 52(2) ページ: 57-71
巻: 52(2) ページ: 72-86
ストレスマネジメント研究
巻: 16(1) ページ: 12-23
巻: 16(2) ページ: 12-19
International Journal of Mental Health and Addiction
巻: Jul 13 ページ: 1 - 11
10.1007/s11469-020-00368-z
Psychiatry and Clinical Neurosciences
巻: 74(11) ページ: 628 - 629
10.1111/pcn.13148