研究実績の概要 |
同一コミュニティ内の小中学校において、児童生徒1,061名とその保護者を対象としたコホート調査を継続し、ソーシャル・サポート、ソーシャルスキル、援助要請認知・スキル、発達障害傾向(ASD、ADHD)および心理社会的適応状態(情緒的・行動的問題および抑うつ症状)に関するパネルデータを収集した。 二次障害を緩和する可能性のある心理社会的環境要因の代表格であるソーシャル・サポートについて、児童生徒を対象とした多面的なアセスメントツールを整備するために、海外でも多く使用されている「Child and Adolescent Social Support Scale (CASSS)」の日本語版を作成し、信頼性・妥当性を検証した。 CASSSによって評価されたソーシャルサポートが小学生の内在化問題にもたらす影響については、保護者サポートと教師サポートの間に交互作用が認められ、両者のサポートがどちらも高い条件において内在化問題をより低減する可能性が示唆された。 中学生では、回避型の援助要請スタイルを有する場合、友人サポートと抑うつ症状の関連が弱まることが明らかになった。 中学1年生から中学3年生までの3時点のパネルデータを解析した結果、中学1年生時点の発達特性およびソーシャルスキルが、中学2年生時点の特定のソーシャル・サポートを媒介し、中学3年生時点の抑うつ症状に間接的な効果をもたらすことが示された。 発達障害傾向のカットオフを超え、かつ不適応状態にある児童生徒については、ソーシャル・サポートが低く、支援サービスの利用率が低い実態が明らかとなった。
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