研究1としては、カンボジア首都プノンペン市にある国立障害児入所施設ナショナルボレイにて、脳性麻痺を12名(男児11名:女児1名)を対象とした臨床動作法による介入を行い、対象児童の座位の粗大運動の発達について、該当するアウトカム指標を用いて効果を検証した。アウトカム指標は、国際的にも信頼性と妥当性が示されている、Gross Motor Function Measure Manual-88:GMFM-88(B:座位)を使用した。介入の前後で、GMFM-88(B:座位)を測定し、得点の有意差と効果量の確認をウィルコクソン符号順位検定によって行い、介入前後の有意な得点改善と高い効果量が確認された。 研究2では、上記の施設職員を対象に、臨床動作法を通じた入所児童の日常生活における自立機能の向上についてインタビューした。インタビュー対象の施設職員13名(男性3名:女性10名)からは、入所児童の身体面、健康面、外界認知面、心理面、コミュニケーション面における自立機能の向上が回答された。回答内容は、KJ法によるカテゴリー分析、カテゴリー間の関連性をカイ二乗検定によって確認した。以上の分析で、臨床動作法による入所児童の身体面の発達が、外界認知面、心理面、コミュニケーション面の発達と関連することが示された。 これまでに、日本の障害当事者やその支援者、カンボジアの障害当事者とその支援者の双方のインタビュー研究から、肢体不自由児者の身体障害とメンタルヘルスの改善、それによる社会参加のための能力開発についての知見を整理し、本研究フィールドに知見を還元してきた。本研究の目的であった研究フィールドとなった施設内で臨床動作法の療育システムを構築、運営を補助し、その中で臨床動作法の実践者を育成し、今年度行った効果検証、日常生活面の改善体験の収集まで行うことができた。
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