本研究は、知的障害者のライフコースとQOLの特徴と支援に関する課題を明らかにすることを目的とした。2023年度は、オーストラリアとデンマークでインタビュー調査を実施した。オーストラリアでは、デイセンターに所属する知的障害を持つ若者(19歳から20代)5名とその4名の親から協力を得て、インタビューを実施した。一部の親は、国家障害保険制度(NDIS)の下でのサービス利用が子供の支援と活動の選択にポジティブな影響を与えたと感じていたが、公的なサービスが子供のニーズに十分に対応していないと感じている親もいた。デンマークでは、知的障害者5名とその親6名にインタビュー調査を行った。学校選択、学校卒業後の進路選択、親元からの独立など、子が成人となりゆく過程において、障害、親子関係、支援をめぐる葛藤、現在のQOLへの影響についての分析を進めた。2022年度に日本で実施された調査に基づく中間報告として、2023年5月、Nordic Network on Disability Research でポスター発表を行った(タイトル「The Experiences of Parents of Adults with Intellectual Disabilities in Japan: Support and Barriers During their Children’s School Period」)。本研究全体を通じて、知的障害者のライフコースが各国の教育制度や社会制度、個々が持てる環境的要因、すなわち家族や友人、パートナー、支援者との関係などによっても特徴づけられ、個人の成長や自己決定などのQOLに影響を与えていることを明らかにした。
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