研究実績の概要 |
経肛門的全直腸間膜切除術(Transanal total mesorectal exision,以下 TaTMEと略記)を実施する上で、従来の直腸手術では一般的でない経肛門的巾着縫合手技( Transanal endoscopic rectal purse-string suture, 以下taEPSと略記) のシミュレーショントレーニングに使用できる技能評価ツールを開発し、妥当性評価を実施した。針把持、愛護的運針、計画的運針、総合評価の4項目3段階評価から構成する評価ツールの内的妥当性は0.713、評価者間信頼性は0.7-0.76であった。腹腔鏡手術で最も多く使用されるGOAL評価との相関係数は 0.964であった。112例の手術ビデオの評価において、taEPSスコアは所要時間(r=-0.69, p<0.05)と手術経験に相関を示した。taTMEに係るテキスト、論文等の文献分析、新規高難度医療技術の現場見学を進め、①術前準備:手術適応、解剖、手術工程、②特有の周術期合併症、術中合併症に対する対応、③手術室チーム構成と役割分担、④医療機器に関する注意点、⑤導入前シミュレーションに学習項目を類型化した。手術チームによる手術工程シミュレーションに加え、ヒト解剖でなければ再現できない手術手技修練に関してはカダバートレーニングの学習効果が最大化する項目であると考えられた。術式特有の基本手技については、モデルを使用するトレーニングが反復修練において有用であることが確かめられた。研究実施中にTaTMEの臨床的意義を疑問視する報告が散見され出したため、関連論文を収集し、臨床的意義に関するデータ解析を実施することとした。学習教材の整備を進め実際のトレーニングを計画したが、新型コロナウイルス感染拡大により対面集合型研修は実施できなかった。
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