研究課題/領域番号 |
20K14077
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
石井 和也 宇都宮大学, 大学教育推進機構, 准教授 (70822683)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ルーブリック / 学生発案型授業 / 学習成果可視化 |
研究実績の概要 |
本研究は,学習成果可視化において,学生の学習改善とアカウンタビリティが適切に行なわれているかを検証するという目的の下,「学生自身による自己評価をどのように評価すればよいか」及び「学生自身の学習改善とアカウンタビリティの実状はどのようなものか」という学術的問いを立て,学生の自己評価の実状を明らかにし,それをどのように評価すべきか検討するとともに,学生にとって意味のある学習成果可視化とはどのようなものかを明らかにしていく。 本年度は,学生の自己評価の実状を明らかにし,それをどのように評価すべきかを明らかにするために,大学生の正課内外の諸活動の状況,それに対する学生自身による自己評価の実状,こうした自己評価を学生はどのように活用することを望んでいるか,実際にどのように活用しているかといった4点について,X大学の学生を対象とした質的調査を行った。 その結果,学生にとって外在的と感じられる評価指標による評価(典型的には,大学が設定した汎用的能力の指標など)に比べ,自らの言葉により自らを評価することに,学生自身の納得感が強く現れていることが示唆された。ある意味このことは予め想定されていた結論であるが,このことは次の難問を導くことになる。すなわち,学生自身の言葉による自己評価の強い納得感で学習成果を可視化すべきか,あるいは学生の納得感が低くても,大学側が設定した評価指標で学習成果可視化を行うか,という問いである。理想としては,もちろん,納得感を得られながらも,ある程度統一された評価指標を導き出すことである。 そこで,これらのこと踏まえ,本年度は,X大学で開講されている学生発案型授業において,評価(主に形成的評価)に用いるルーブリックを学生と協働して作成し,納得感と統一性の両立が実現できるか試みた。これらの詳細な結果は学会発表にて報告し,さらなる検証を続けることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響により,当初予定されていた複数大学の学生へのインタビュー調査等は実施できなかったが,その一方で,X大学の学生を対象に十分な質的調査を実施し,その成果を学会発表で報告することができたからである。また,「研究実績の概要」にも記したように,X大学の学生発案型授業において,学生と協働してルーブリックを作成するという試みを行うことができ,納得感と統一性を両立した学習成果可視化システムの実現に向け,具体的な方策となり得る道筋を見出すことができた。併せてこの成果は学会発表で報告することができた。 以上のことから,本研究は「おおむね順調に進展している」と判断するのが妥当である。
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今後の研究の推進方策 |
X大学以外の大学に所属する学生に対する十分なインタビュー調査を実施し,X大学で得られた知見の妥当性を検証する。併せて,これらの調査を基に,大学生の正課内外の諸活動の状況,それに対する 学生自身による自己評価の実状,こうした自己評価を学生はどのように活用することを望ん でいるか,実際にどのように活用しているかといった4点について,概念モデルの構築を経て,学生の自己評価に関する理論モデルを作り上げていく。 併せて,学生と教員とが協働して作成するルーブリックが,学生の自己評価や教員による評価にどのような影響(効果)を与えるかと言うことについても調査を行い,このような形のルーブリックの他授業への応用可能性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により遠隔地でのインタビュー調査が困難となり,旅費の支出が困難となったため。それに伴い,インタビューデータの文字起こしを依頼する際の謝金の支出もできなかったため。
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