本研究は,「学生自身による自己評価をどのように評価すればよいか」及び「学生自身の学習改善とアカウンタビリティの実状はどのようなものか」という学術的問いを立て研究を進めた。本年度は,学生の自己評価の実状を明らかにするとともに,それらの学生が正課外の活動においてどのような能力を発揮しながら活動を行っているか,それらの正課外活動に対する自己評価はどのようなものかということを明らかにすることを目的として研究を進めた。具体的には,X大学においてピアサポート活動に取り組む学生を対象として,参与観察を行いながら学生の自己評価と正課外活動の実態を捉えていくとともに,インタビュー調査を行うことで学生の考えをより具体的に捉えていった。その結果,こうした正課外活動に取り組む際には,様々な汎用的能力のベースとして,主体的に目標設定をし,活動の仕組み作りを自ら行っていく能力が極めて重要であることが明らかとなった。こうした能力は,学生の自己認識としても重要な能力として捉えられているということもわかった。これらの能力を自己評価するために,ピアサポート活動に必要な能力を自己評価できるルーブリックも学生自身によって作成され,試行的に活用されている。 以上の結果を踏まえると,研究期間全体を通じた研究成果は次のようになる。「学生自身による自己評価をどのように評価すればよいか」及び「学生自身の学習改善とアカウンタビリティの実状はどのようなものか」という問いに対しては,学生自身が自己評価のためのツール(ルーブリック)を作成する過程に関与し,ルーブリックの意味を十分に理解した上で自己評価を行うことで,学生は自らの力について十分に説明できるようになるということが言える。このことで,学生は自らの学修を改善させることも可能となると考えられる。正課内に限らず,正課外においても,ルーブリックによる自己評価の有効性が確かめられた。
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