研究課題/領域番号 |
20K14100
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
篠原 和也 常葉大学, 保健医療学部, 准教授 (20805775)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リハビリテーションセラピスト / 対象者 / 信頼関係 / プロセス / 質的研究 |
研究実績の概要 |
近年,わが国のリハビリテーションセラピストの増加に反し,新卒者の質の悪化が指摘され,より良い教育の必要性が強く訴えられている.特に,対象者との関係性の問題が,治療効果や効率に悪影響をもたらすと言われているが,昨今において,良好な関係作りに必要なスキルを内省できるツールはなく,その教育技術も確立されていない.本研究は,①フィールドワークから,セラピストが対象者と良好な関係を作るプロセスを明らかにすること,②対象者との良好な関係作りに必要なコミュニケーションスキルについて,セラピストが内省できるツールを新たに開発すること,③このツールを新人セラピストに適用した臨床教育を試行することを主旨とした. 2020年度は,質的研究手法により,リハビリテーションセラピストが患者と信頼関係を形成するプロセスを明らかにした.臨床経験3年以上で,患者との信頼関係形成に努めている作業療法士5名,理学療法士4名,言語聴覚士3名に行った半構造化面接における質的データから,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて,信頼関係の形成を図った行為の概念化とこれらの概念のストーリー化を行った.その結果,69個の概念と15個のカテゴリ,および,5個の大カテゴリが生成された.そして,セラピストが対象者と信頼関係を形成する行為のプロセスは,10の基本的姿勢を備えた上で,情報収集と共有および初回面接と評価,介入計画,介入,介入計画の変更やフォローアップという一連のリハビリテーション過程の遂行とともに,対象者とのコミュニケーションや関係性に配慮し,セラピスト自身のできたこととできなかったことを内省することと要約された. これらの成果は,2020年10月に開催された第30回日本保健科学学会学術集会で口述発表し,本演題は最優秀演題賞を受賞した.同年内に,それを論文投稿し,査読の結果を待機している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度に計画した研究は,学会発表を経て論文投稿を完了しており,現在,2回目の査読を待機している.従って,本研究論文は近日中に,掲載される可能性が高い. 2021年度は,Communication Skills Assessment in clinical setting案を作成するDelphi法を用いた研究を計画している.本研究は,2020年度中に所属機関における研究倫理審査の申請を完了し,承認を得て,現在,データ収集の手続きに着手している.
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の全国的な拡大もあるが,通信技術を駆使して,2021年度に計画したDelphi法を用いた研究のデータ収集と分析を年内に完了し,学会発表を目指したい.また,2021年度内には,学会発表をもとにした研究論文の投稿を推進したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の全国拡大により,参加予定であった学会が中止またはウェブ上での開催となり,計上した通りの旅費を使用できなかったことが理由である.その次年度使用額は,今後の研究に必要とされる図書の購入を計画する.
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