研究課題/領域番号 |
20K14110
|
研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
渡部 宏樹 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報工学研究室, 研究員 (00849896)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 脳波 / P300 / モチベーション / e-learning |
研究実績の概要 |
本研究では、脳波応答に基づいた、学習アプリケーション使用中の学習者の客観的なモチベーション度合いの推定システムを構築し、その推定システムに基づいて学習者のモチベーションに応じた最適な学習コンテンツを提供する学習者適応型e-learningシステムの開発を目指す。本年度では、学習アプリケーション使用中のモチベーション度合いが、脳波反応に現れることを実験的に明らかにした。実験では,最適で達成可能な目標を設定するとモチベーションが高まり,逆に目標が高すぎる、あるいは低すぎたりするとモチベーションが低下するモチベーション理論に基づき,学習アプリケーションの課題目標の達成難易度を用いて変化させたモチベーション度合いが事象関連電位の振幅に反映されるかどうかを調べることを目的とした。成人33名を対象に,計算課題のアプリケーションを使用しているときの脳波を測定した。この課題では,3桁または2桁の数字の足し算の答えを入力し、その正誤を音声によってフィードバックした(計64問)。セッション間でモチベーション度合いを変化させるため,各セッションで目標スコアを「簡単」「適切」「難しい」の3段階にあらかじめ設定した。これらはそれぞれ、2回の練習セッションの平均スコアの0.25倍、1.3倍、5.0倍とした。課題終了後,参加者は各達成難易度に対するモチベーションを7段階のリッカート尺度で評価した(主観評価)。P300の平均振幅を応答変数とし,各参加者をランダム効果,達成難易度と主観評価を固定効果とした線形混合効果モデルによる検定の結果,主観評価がフィードバック関連のP300の有意な説明変数であった(p<0.05)。この実験により、学習アプリケーション使用時の脳波計測が、学習者が実施中の課題に対してどれほどモチベーションが高まっているかの客観的指標となりうることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度では、当初予定していた通り、学習アプリケーション使用時のモチベーションと脳波反応との関連性を示すことができ、おおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、学習者のモチベーション度合を推定するための機械学習モデルの設計を実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、国内および国際会議が延期またはオンライン開催となったため、旅費、参加費などの支出がなくなったため。また次年度では、学習者のモチベーション度合を機械学習を用いて推定する研究に取り組むため、高性能GPUなどのハードウェアが必要となるため、それらの購入に使用する予定である。
|