本研究の目的は、ゲーミフィケーションを導入した教育アプリケーションを使用して勉強している際の脳波からモチベーション度合いを推定し、学習者のモチベーションが湧くような目標レベルや到達目標を適応的に設定することでモチベーションを喚起する教育アプリケーションの開発に向けた基盤技術の構築を行うことである。本年度では、ゲーム型の教育アプリケーションを使用した計算課題中の脳波や行動指標を用いて機械学習モデルを訓練することで、「他者と競争して勝利する」目標への選好性の度合いが予測可能であることを明らかにした。実験では、計28名から他者と課題成績を競争し勝利することや自身の過去の最高課題成績を上回ることを目標として設定し計算課題を実施している際の脳波を計測し、解答の正解・不正解を示すフィードバックに対して惹起する事象関連電位の反応の大きさを特徴量として抽出した。行動指標に関連する特徴量と合わせて、主観評価に基づいて定量化した「他者と競争して勝利する」ことへの選好性の度合いを予測するよう機械学習モデルを訓練しその性能を評価した。その結果、実際の選好性の度合いと予測した度合いに有意な相関が見られ、勉強課題中の脳波や行動指標から目標の選好性の度合いが予測できることが示唆された。このような研究成果によって、教育アプリケーションを使用して勉強する生徒一人ひとりの達成目標の選好性を推定し、それに応じた目標設定を行うアプリケーション開発への応用が期待される。
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