本研究では,ものづくりの企画・実現力を高めたSTEAM木材加工学習を実現することを目的に,材料の選択および加工技能の習得に焦点をあて,思考を伴う課題解決を経験できる教育プログラムの開発・検討を行っている。 材料の性質に関する学習において,加工学習における複数樹種のランダムな配布は,生徒自身が経験から違いを認識するのに有効であることを明らかにした。一方,どの種類の木材をどの用途に,といった現実世界との架橋が十分ではないように思われた。そこで2022年度は,樹種による材料の違いに基づく材料選択を,木材の製品の質と関連づけて思考する教育プログラムを開発するために,木工万力の当て木に使用する樹種の選択,および実際に加工する授業実践を行った。異なる3種の木材(アガチス,ブナおよびラワン)について,加工前後について「最適と思われる樹種」とその理由を問うた。授業実践の結果,簡単な実験により材質の違いを経験させる経験は,生徒の材料(樹種)選択の結果に影響していた。材質に加え,製品単価をあらかじめ示すことが,トレードオフの考えを導入した材料選択・ものづくりの学習のために有効であることが明らかとなった。
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