研究課題/領域番号 |
20K14126
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
白岩 祐子 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (40749636)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 死後世界観 / afterlife belief / life after death / 霊魂観念 |
研究実績の概要 |
COVID-19の蔓延により延長してきた社会調査を当該年度は実施し,1)大切な故人の死後をめぐる日本人の心象(二人称の死後世界観)を測定する尺度を作成・標準化するとともに,2)故人との関係や死別に関する要因とそれら死後世界観との関連を明らかにした。 具体的には,1)について,死後世界観は以下のような5因子構造をもつことが確認された:①故人の人格や意識を残した魂が存在し,自分たち遺族の近くにいて見守り,支えてくれているという「魂との共生」因子,②故人は遠き良き場所にいるという「良き他界」因子,③故人はまた別の世に生まれ変わるという「生まれ変わり」因子,④故人は自然や宇宙,神,歴史などに融合していくという「大きな存在への統合」因子,そして,⑤故人は遺された者の記憶や,成し遂げた軌跡に生きるという「記憶・記憶」因子である。 2)のうち属性との関連では,国内外の先行研究と同じく,性別および年齢の一貫した効果が確認された。すなわち,「魂との共生」「良き他界」「生まれ変わり」といった典型的な死後世界観では女性のほうが得点が高く,また高齢者の方が得点が低かった。さらに,故人に対する喪失感は一貫して死後世界観と正の関連を有していた。また,予想に反して,故人は心残りのない人生を送った,と認識する遺族ほど死後世界観も強いことが明らかになった。つまり,穏やかな死別を経験した多くの人にとって,死後世界とは,故人の不幸な現世の補償機能をもつというよりは,故人の幸福な現世の延長として存在することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の蔓延により2年間,自己や大切な人の死(後)をテーマとする本研究は実証的研究を行うことが叶わず,当初計画より大幅な遅れが生じていた。 2022年度は社会情勢がやや落ち着いたことから,かねてより予定していた社会調査を実施することができた。2023年度はCOVID-19以前の状態に近づきつつあることから,以後,予定していたすべての研究計画を実行に移す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在,1)引き続き二人称(大切な人)の死後世界観を明らかにする目的で,戦死者遺族を対象に行う社会調査,および2)二人称(自己)の死後世界観尺度の作成・標準化の作業を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
前掲の通り,コロナ感染症の蔓延により研究計画を予定通り遂行できなかったことによる。
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