本研究では、VR技術を利用したシステムを開発し、交通事故を未然に防ぐために、運転者の安全意識を訓練することを目的としている。 まず、運転者がヒヤリハットに遭いやすい道路環境で走行し、360度全方位カメラ「GoPro Fusion」を用いて、合計45件のヒヤリハットの運転映像を収集した。この映像は、走行環境(交差点、高速道路、バス停留場付近、横断歩道など)と時間帯(日中、夜間)に応じて分類した。この方法により、従来の2Dドライブレコーダー映像よりも、より臨場感があり、情報量が豊富な運転映像の収集が可能になった。 さらに、全方位映像内の歩行者、自動車、信号機などの対象物を自動検知するために、画像認識技術を用いた機能を開発した。また、連続再生映像から歩行者などの交通参加者を追跡するために、LSTM法を利用して追跡の精度を向上させた。 また、アイトラッカーとドライビングシミュレータを用いて、注視行動の計測・分析を行った。開発した運転者教育システムを用いて、市街地を模したコースで2つの対象交差点での右折の際の注視行動と反応時間の分析を行った。 さらに、効率的な訓練方法を明らかにするために、360度ヒヤリハットデータベースにおける映像をまとめた複数の映像シナリオを用意し、検証実験を実施した。平均反応時間を計測し、同じ映像シナリオに対して複数回計測を繰り返した後、さらに提示される異なる映像シナリオに対しても同様に実施した。その結果、計測結果を最初の計測結果と比較し、平均反応時間に有意差が見られることを検証しました。また、被験者毎の差異および若年層と高齢層での傾向の違いについても明らかにした。
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