研究課題/領域番号 |
20K14130
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研究機関 | 帝塚山大学 |
研究代表者 |
森泉 慎吾 帝塚山大学, 心理学部, 准教授 (50735066)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 安全教育 / 効果 / 不安全行動 / 事故 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、事故に繋がりうる不安全行動について、これまでに数多くの先行研究によって実施されてきた教育的介入は本当に効果的であったのか、また教育的介入の何をもって「効果的」と見なすのかの2つの問いに着目した研究を行うものである。教育的介入の効果を目的とした研究成果においては、出版バイアスの影響を受けやすいと考えられるため、その効果の大きさについては検証の余地があると考えられる。本研究課題においては、それらの問いについて心理学的に検証することで、安全教育に関する学術的知見を提供するとともに、研究知見の現場への還元を目指す。 研究課題4年目の令和5年度においては、自動車教習所等から研究協力を頂き、高齢ドライバーに対して安全教育(身体機能改善を含む教育プログラム)を実施した際の効果測定指標として、運転行動の指導員評価(研究協力を頂いた自動車教習所にて高齢者に実際に運転をさせ、その運転ぶりについて教習所指導員が評価したもの)を提供を受け、教育効果の個人差について分析を行った。その結果、全体的に教育効果が認められた一方、その効果の個人差については、対象となった高齢ドライバーの生活スタイルや、運転に対する自信などの心理的要因が関連する可能性が示唆された。 さらに、令和5年度では、これまでの研究課題の成果を踏まえ、交通安全領域における教育の効果と問題点、そして今後の展望に関する総論を執筆し、雑誌「交通安全教育」に掲載した。問題となる不安全な行動に対する介入の必要として、安全に対する動機づけを高める必要性などを指摘するとともに、本研究課題で扱うような効果を促進・介入するような心理的要因を考慮する必要性について論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度から続く新型コロナウイルス感染症について、感染症分類が変更になるなど、流行前の生活水準に戻りつつある一方、コロナ禍で増大した本務での業務量に大きな変化はなく、本研究課題に費やせるエフォートが当初(コロナ禍以前の想定)の予定よりも格段に小さくなってしまったことが主な理由である。 一方で、一昨年度に続き、コロナ禍で研究課題の実現可能性を吟味する必要性が生じたことで、課題申請時よりもより適切な研究フィールドの獲得、および研究を進捗させることで、当初の予定に軌道修正できる見込みがたったことが、令和5年度の大きな収穫である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究成果および、一昨年度までに取得したデータについて、引き続き精緻な分析を継続するとともに、関連する研究成果を発信する準備を進めていく。 その中で、安全教育の効果を阻害しうる心理的要因について具体的に明らかにするとともに、それらの効果および除去に伴う実証研究を計画する予定である。昨年度までに研究協力を頂いたフィールド先からは引き続きデータや研究フィールド、リソースを提供して頂ける見込みは立っているため、計画が立案されれば、実施まではスムーズに進められると見込んでいる。 平行して、実証フィールドから得られた知見は」、応用可能性は高い一方、その効果の厳密性・頑健性は欠ける可能性があることから、クラウドソーシング等を利用した調査研究を補足的に実施することで、研究成果の信頼性を確認することも計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症はほぼ終息し、その影響は限りなく小さくなった一方、ウクライナ危機やイスラエル・ガザ戦争など、国際社会情勢の緊張状態により、特にヨーロッパを中心とした国際学会への参加が躊躇され、採択当初から国際学会参加に旅費を使用していない。また、国内での各学会・研究会においても、オンライン開催を継続するところも多く、出張経費を多く必要としなくなった。 さらに、当初、研究協力を頂く上で準備していた謝金について、研究代表者とフィールドとの関係の中で一部無償でご対応頂けるなど、使用の必要が無くなったことも、使用額を繰り越した理由の一つである。これによる余剰については、当初の研究計画で明らかにしようとしている目的を鑑み、これまで得られた成果の信頼性・妥当性を担保する調査研究を実施することに補填する。 さらに、本務先や研究協力先で貸与・使用していたPC等の機材が経年劣化により、使用が難しくなっているものも一部で見られ、それらについての修繕あるいは買い替えを令和6年度に予定している。 また、令和2年から令和5年までと比較して、対面での学会集会は各段に増加したため、積極的に参加することで関連する研究者と情報交換を行い、研究成果のブラッシュアップを行う。
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