研究課題/領域番号 |
20K14131
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
平川 真 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 講師 (50758133)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コミュニケーション / 間接的要求 / 言外の意味 / 解釈についての信念 |
研究実績の概要 |
本研究は、言外の意味を用いたコミュニケーションの例である間接的要求をとりあげ、聞き手の解釈について話し手がもつ信念 (以下、解釈についての信念) に着目して、コミュニケーションの成立について検討するものである。 2021年度は、間接的要求についての具体的な会話場面(40場面)について、一部の項目を修正し、その解釈率を再度検討するために、クラウドソーシングサービスを利用して、1000名を対象としたweb調査を実施した。具体的な会話場面についての解釈率のデータは2018年度にweb調査会社のモニターを対象に、各場面について500名からのデータを取得していた。 今回、解釈率のデータを再度取得することとしたのは、以下の理由によるものである。解釈についての信念を検討する際には、集団の解釈率を予想させ、その実際の値とのズレを評価する。そのため、集団の解釈率は正確な値である必要があるが、解釈についての信念を検討する際に、クラウドソーシングサービスを利用してデータを取得することにした。調査サンプルの母集団が変化するため、再度解釈率の値を得る必要があった。 今回取得したデータは、2018年度データを収集した際の項目を一部修正しているが、基本的に同じものを利用した。修正していない項目について、解釈率の平均値をデータポイントとして相関係数を算出したところ、r=.98と非常に強い相関が得られた。また、2つの調査時点での各項目の解釈率の平均値について、その差の絶対値を算出し、値の変動を検討した。差の絶対値の中央値は0.029(最大値0.079)であり、2018年度に取得したデータと2021年度に取得したデータは、年度も母集団も異なっているが、安定的な値を示した。 これにより、解釈についての信念の正確さを、間接的要求についての具体的な会話場面について定量化することができると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで利用していたweb調査モニタについて回答の質の悪化が懸念されたため、当初の計画と異なり、研究対象者を募集するプールを変更した。そのため、解釈率の平均値データを再度取得することとした。 これにより、より適切な値を得ることができた。また、2018年度に取得したデータと2021年度に取得したデータは、研究対象者の母集団が若干異なり、また、社会情勢も大きく異なっているが、解釈率の平均値が安定していることが示され、解釈についての信念を評価する際の参照点として適切な値として機能することが確認できた。研究の進捗はやや遅れているものの、これらのことはデータを再度取得することで得られた成果である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、今回のデータの値を利用して、解釈についての信念の正確さについての検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、2020年度に引き続き、新型コロナウィルス感染拡大によって、例年と異なる急な対応が必要な業務が発生したため、エフォートを予定通りに割くことができなかった。また、これまでの調査で利用していた対象者を募集するプールにおいて、あまりよく調査票を読まずに回答する対象者が増えたため、プールを変更することとしたため、調査の実施が遅れた。これにより、2020年度と2021年度のweb調査用の予算が、次年度使用額として発生した。また、学会の年次大会への参加・発表等で旅費による使用を見込んでいたが、オンラインでの参加となったため、旅費の支出がなかった。 次年度使用額については、計画していて実施が遅れているweb調査の実施費として使用する。 2022年度分の予算は、当初の計画を進めるために使用する。
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