本研究の目的は,在留外国人に対するステレオタイプについて検討し,援助政策への賛意を生み出す方略を社会心理学の観点から考えることである。2023年度は以下の2つの観点から研究を行った。 1点目に,在留外国人のイメージ調査を行った。日本において働いている外国人が,どのような職業についている印象があるかを調査し,職業によってイメージが異なるのかを検討した。調査の結果,語学教師や外資系企業などいわゆるホワイトカラーの職業に就いているイメージよりも,工場など製造業や建設作業員などブルーカラーの職業イメージが強かった。 2点目に,2022年度に引き続き,在留外国人に対するたくましさの認知バイアスを検討した。実験の結果,日本にいる在留外国人は,日本人よりもたくましいと認知されており,こうしたバイアスの頑健性が確認された。今後は,バイアスがあることで援助行動の抑制につながる可能性があるのかを検討していく必要がある。 これまでの研究を総括すると,大きく分けて以下の2点の成果が得られた。まず,在留外国人に対するイメージや,それを規定する要因について検討を行ってきた。具体的には,新型コロナ禍においては感染症脅威が外国人に対する偏見を増加させること,在留外国人は過度にたくましいと認知されやすい傾向があることを明らかにした。 次に,こうしたバイアスがあることを示したうえで,イメージの改善方略や援助を促進するにはどうすればよいかを検討してきた。具体的には,募金を促す広告の在り方や,仮想接触やメタ認知による親密性を高める方法について知見を提示することができた。
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