研究課題/領域番号 |
20K14136
|
研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
安斎 聡子 青山学院大学, コミュニティ人間科学部, 准教授 (60847250)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 記憶 / 継承 / 体験性 / 遺構 / 場所性 / 環境 |
研究実績の概要 |
本研究は、出来事の体験者の記憶が直接体験をもたない世代(=「非体験者」/継承者)に受け継がれる際、その痕跡(遺構)が存在すること、その痕跡との接触の程度がどのような影響を与えているのかを明らかにすることを目的としている。度重なる自然災害や戦後75年を経て体験者が不在となりつつあるなか、記憶の継承は社会の要請とされ、遺構保存の是非が話題に上るが、その保存の意義については未だ実証的に明らかになっているとはいえない。本研究はこの問いに応えることをめざし、沖縄本島南部の集落を調査地として、その地における沖縄戦の記憶の継承と環境との接触の状況を把握、検討する。 この目的から研究手法として現地での参与観察、インタビューが必要となるところであるが、令和2年夏より開始する予定だった現地調査は、令和2年初頭より流行し始めた新型コロナウィルス感染症により令和4年度いっぱい見合わせざるを得ず、令和4年度よりようやく可能となったところである。 令和4年度においてはまず、現地の環境の保存状況調査(家屋や石垣等の戦前から残るものの現況確認、戦争遺構、慰霊碑等の状況)を実施した。また、地元の歴史・民俗等の学習活動に係る人々の活動に1、2ヶ月に1回程度参加し、そこでの活動について参与観察を行なっている。そのほか、現地で開催される慰霊祭の参与観察を行い、現時点での過去の出来事に接触する一つの機会として、地域住民がどのようにこの行事に関わっているのかを確認した。加えて、戦後生まれの住民、元住民を中心にインタビューを行いデータ整理を実施した。戦争とその戦死者に関する事項については、当該地域における慰霊の慣習、考え方への理解が必要となることから、それらに関する文献を収集するほか、当該地域の戦前から戦後にかけての変遷についても、既存の文献より確認を行なっているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染が2年続いた間に、調査地における年中行事やその他の活動の縮小、取りやめが続き、当初の予想以上に参与観察の場面が限られていることが理由として挙げられる。 また、インタビュー場面では、当該地域の言語(方言)が使用されることも多く、意味の理解、トランスクリプト化作業に時間を要していることも理由の一つである。
|
今後の研究の推進方策 |
参与観察場面が限られていることから、データ収集がもっぱらインタビューに偏っている。このデータ収集の状況を評価した上で、ワークショップ形式等による新たなデータ収集方法の実施の必要性を判断する予定である。実施の際には、現地協力者との相談の上その可能性を探りたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症蔓延のため2年間現地調査が実施できず、令和4年度から実質的な調査開始となったことにより、次年度使用額が生じる結果となっている。令和5年度は引き続き参与観察にかかる経費とともに、トランスクリプトの外部への発注により、残額の計画的な使用が可能となる見込みである。
|