研究課題/領域番号 |
20K14138
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
藤井 貴之 玉川大学, 脳科学研究所, 特任助教 (40804000)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 向社会的行動 / 社会的価値志向性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、協力行動の意思決定場面における社会性のタイプと思考プロセスの関係に着目し、協力行動の決定要因の個人差を明らかにすることであり、これまで社会的相互関係性が異なる経済ゲームにおける反応時間と社会性のタイプの関係性を検討している。
具体的には、先行研究の知見に基づいて参加者の社会性のタイプを社会的価値志向性(SVO)によって分類し、独裁者ゲームと最後通牒ゲームの意思決定で示される向社会性及び意思決定に要する時間との関連を調査した。独裁者ゲーム(DG)では分配者の提案した分配額がそのまま両者の結果となるため、分配者は受け手の意思決定を考慮する必要がない。これに対して、最後通牒ゲーム(UG)では提案者が分配額を提案した後に決定者が受け入れるか拒否するかを意思決定するため、提案者の意思決定において決定者の意思決定を考慮するプロセスが生じる可能性がある。この点に注目し、社会性のタイプによってこれらのゲーム間での戦略に違いがあるかどうかを検討した。
これまでの検討で、SVOで一貫して高い向社会性を示した参加者においては、どちらのゲームにおいても反応時間と向社会性との間で負の相関関係が示された。一方で、SVOで一貫して低い向社会性を示した参加者においては、DGでは反応時間と向社会性との間で正の相関関係が示されたが、UGではそのような関係性が示されなかった。参加者の社会性のタイプによってDGとUGの意思決定状況に応じた戦略切替えやそのプロセスに違いがあることを示唆する結果が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の社会状況に伴い、参加者が実験室に来て行う対面での実験実施が困難となり、データの収集がやや遅れている。社会状況の変化に応じて実験を再開する予定としている。既存のデータ解析において、参加者の社会性のタイプによって、意思決定状況に応じた戦略切替えやそのプロセスに違いがあることを示唆する結果が得られており、今後の実験再開により当初予定していた進捗に近づいていくものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
社会状況を考慮し、安全性を確保した体制が整い次第、データ収集のための調査及び実験を再開する予定としている。その他については当初の研究計画の通り、社会性のタイプ、向社会的行動、脳構造データについて、解析に必要なデータ数まで調査及び実験を実施し、解析が進んだ段階で学会発表および研究成果のまとめを進める予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により参加者と対面する形での実験実施が困難な状況が生じたため、社会状況の変化に応じて調査および実験を行う予定として実施の時期をずらしたことで次年度使用額が生じた。前年度分は今年度に実施する本来は前年度に予定していたデータ取得および学会発表等に用い、翌年度分として請求した助成金はそのまま翌年度の使用計画での執行を予定している。
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