研究課題/領域番号 |
20K14140
|
研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
福島 慎太郎 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (80712398)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 信頼 / 安心 / 解き放ち理論 / 根ざし理論 / 信頼性 / 規範 / マルチレベル |
研究実績の概要 |
2023年度は、「趣味・選好型の集合活動」および「地縁・義務型の集合活動」に着目し、それら集合活動とメンバーの「評判懸念」との関連を検証した。その結果、「趣味・選好型の集合活動」は評判懸念を低めるのに対して、「地縁・義務型の集合活動」は評判懸念を高めることが示された。前年度の結果と併せて、「趣味・選好型の集合活動」に参加する人々は信頼性に基づいた「能動的な協力関係」を築くことで信頼の「根差し理論」を個人レベルで促進するのに対して、「地縁・義務型の集合活動」に参加する人々は他者からの信頼や集団で共有された規範に応える「受動的な協力関係」を築くことで信頼の「解き放ち理論」を集団レベルで促進することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、信頼の「根ざし理論」と「解き放ち理論」を統合することを目標としており、これまでに国内調査データの分析と日米調査のデータ分析を行ってきた。 国内調査データを分析した結果、ミクロレベルとマクロレベルの同類結合が確認され、1)個人間で自分と類似した他者とつながる「ミクロレベルの同類結合」は社会的な流動性が高い個人でより強く確認され、この過程で「安心」と「信頼」の形成を促進する「根ざし理論」が成立すること、2)住民全体の心理傾向が類似する「マクロレベルの同類結合」は住居の流動性が低い地域社会でより強く確認され、この過程で「安心」が「信頼」の形成を抑制する「解き放ち理論」が成立することが示唆された。 日米調査データを分析した結果、レベルの異なる同類結合の背後にある人々の協力関係の相違が確認された。アメリカ調査参加者は本人の信頼性(本人が利他的な行動を取る人物であるか否か)に基づいて「能動的な協力関係」を築く過程で個人間にミクロな同類結合が成立するのに対して、日本調査参加者は他者からの信頼(他者が利他的な行動を取る人物であるかに対する信念・期待)や集団で共有された規範(〇〇して当たり前、〇〇すべきとという信念・期待)に応える「受動的な協力関係」を築く過程で集団全体にマクロな同類結合が成立することが示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までに導かれた国内調査と国際調査の結果を統合すると、次のようにまとめられる。 1)本人の信頼性に基づいて能動的に個人間の協力関係を築く流動性の高い社会では、他者の利他行動もその人の信頼性に根ざしたものであると認識することで、身近な他者との間の「安心」が他者一般に対する「信頼」の形成を促進する「根差し理論」が成立するのに対して、2)他者からの信頼や集団で共有された規範に応える形で受動的に集団全体の協力関係を築く流動性の低い社会では、他者の利他行動もその人の信頼性に根ざしたものではなく利他行動が期待できる「安心」環境に置かれているためであると認識することで、身近な他者との「安心」が他者一般に対する「信頼」の形成を抑制する「解き放ち理論」が成立することが考えられる。 今年度は、これら結果に対して友人関係の成り立ちの視点から次の仮説の検証を行う。1)本人の信頼性に基づいて能動的に個人間の協力関係を築く流動性の高い社会では、相手に内在する心理傾向(価値観など)に基づいて友人関係を築くはずである。それに対して、2)他者からの信頼や集団で共有された規範に応える形で受動的に集団全体の協力関係を築く流動性の低い社会では、相手を取り巻く集団属性(国籍・性別・年齢など)に基づいて友人関係を築くはずである。
|