研究課題/領域番号 |
20K14141
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山本 真菜 日本大学, 商学部, 講師 (50781184)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ステレオタイプ抑制 / 視点取得 / 自尊感情 |
研究実績の概要 |
本研究は,視点取得がステレオタイプの抑制に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。 本年度の研究では,高齢者ステレオタイプを取り上げ,視点取得によってステレオタイプ抑制による逆説的効果が低減されるかどうかを検討した。具体的には,独立変数はステレオタイプ抑制(あり,なし)×視点取得(あり,なし)の2要因参加者間計画であり,従属変数は高齢者ステレオタイプ得点であった。大学生の男女に質問票を用いて回答を求めた。質問票では,まず高齢者の写真を提示しこの人物の一日について記述を求め,その際に独立変数の操作を行った。次に,高齢者ステレオタイプの測定を行った。最後に,視点取得尺度,自尊感情尺度,エイジズム尺度に回答を求めた。 その結果,高齢者ステレオタイプ得点を従属変数としてステレオタイプ抑制×視点取得の2要因の分散分析を全体で行ったが有意な効果は得られなかった。そこで,自尊感情の高低群に分けて同様の分析を行ったところ,自尊感情高群については視点崇徳の主効果が有意であり,あり条件はなし条件に比べ得点が高かった。一方,自尊感情低群については視点取得の主効果が有意であり,あり条件はなし条件に比べ得点が低かった。なお,視点取得得点とエイジズム得点については,高低群に分けて同様の分析を行ったが,有意な差はみられなかった。 つまり,本研究では抑制による逆説的効果はみられなかったが,自尊感情の高い個人は,視点取得を行わなかった場合は行った場合に比べステレオタイプ的判断の程度が低いことが示され,一方,自尊感情の低い個人は,視点取得を行った場合は行わなかった場合に比べステレオタイプ的判断の程度が低いことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の実験の結果,視点取得がステレオタイプ抑制による逆説的効果を低減するという仮説は指示されなかったといえる。高齢者ステレオタイプを用いた実験を行ったが,逆説的効果が得られず,視点取得を行うとステレオタイプ抑制による逆説的効果が低減されるという仮説は支持されなかった。この結果から,高齢者ステレオタイプの「孤独な」という特性については,参加者である大学生において,当てはまりの程度が強くなかった可能性が考えられる。また,ステレオタイプ抑制の操作として,高齢者の1日の記述を求めたが,参加者においては操作が成功していなかった可能性が考えられる。このような結果は,実験の手続きについて修正の必要性を示すものであるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究に向けた課題は,ステレオタイプ抑制の操作を成功させることと,視点取得の役割を検討することである。 本年度の実験の結果から,ステレオタイプ抑制の操作は成功していなかった。今後は,扱うステレオタイプの内容と操作について予備調査を行う必要があると考えられる。さらに,ステレオタイプ抑制における視点取得の役割を検討するために,視点取得によって自己概念が活性化し,ステレオタイプ抑制の際の代替思考として用いらているかどうかを測定する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,新型コロナウイルス感染症の流行拡大のため,学会発表等で利用する予定であった旅費が使用できず,さらに,研究の実施場所である大学において利用できる施設に制限があり又データの取得が困難であったため次年度使用額が生じた。次年度はオンライン上でのデータ取得などを活用し,研究を実施する予定である。
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