本研究では,血圧を調節する仕組みである動脈血圧反射が,社会的排斥(仲間はずれ)により生じる社会的痛みを緩和するという仮説を検証した。3つの実験より,ネックチャンバー法により実験的に誘発した動脈血圧反射が,1) 社会的排斥(仲間はずれ)を経験する中で生じる心理的な苦痛つまり社会的痛みを緩和すること,2) 社会的痛みに加えて,排斥経験に対する攻撃反応を抑制すること,3) 不快刺激に対して配分される注意量を減少させることを発見した。これらより,動脈血圧反射は社会的排斥により生じる社会的痛みや,その後の攻撃反応を抑制すること,そしてその背景には刺激に対する注意配分の変調が関わっていることが示唆される。
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