研究課題/領域番号 |
20K14154
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
川本 静香 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (90769853)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 子ども / 自殺予防 / 学校 / 援助の不成立 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、子どもの自殺の背景にある「援助の不成立」を学校コミュニティの中で立ち現れる様々な状況や、当事者と支援者の有り様、関係性から多面的に捉える説明モデルを構築することである。そのために本研究では、①学校コミュニティにおける当事者と支援者の「援助の不成立」の経験の内容と心理・社会的背景の解明、②10代の自殺未遂事例の 「援助の不成立」に対する当事者・支援者のナラティブ分析、③羅生門アプローチによる 「援助の不成立」に関する説明モデルの構築、の3点の調査研究を実施する。 令和2年度については、新型コロナウイルス感染症による長期休校の影響から、当初予定していた中学生と高校生に対する調査を見送らざるを得なくなった。そのため、R2年度は学校における援助の不成立に関する文献と、学校における援助の不成立に関する事例の収集を予備調査として実施した。事例の収集については、A県の精神保健福祉センターに協力を仰ぎ、A県内の高校教員から寄せられた「援助の不成立」に関わる事例について二次的分析を行った。得られたデータを概観すると、高校での援助の不成立は、教員の認識不足、スキル不足によるものよりも、生徒や保護者の意向や、保護者の持つ精神科治療に関する理解不足、地域の相談機関へのアクセスの困難さ等が影響していることが明らかとなった。詳細な分析を今後行い、令和3年度に学会発表を行う予定である。 また、R3年度に向けて中学生・高校生に対する調査項目について検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のとおり、令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、当初予定していた中学生と高校生に対する調査実施が困難となった。一方で、高校教員から寄せられた高校における援助の不成立に関わる事例を二次分析する中で、今後の調査に資する知見を得ることができた。こうした知見を踏まえ、次年度における調査項目作成を進めている。 また、A県内の中学校、高校にも足を運び、次年度の中学生と高校生に対するアンケート調査の実施に向けた依頼ができる状況が整いつつある。 以上より、予定よりはやや遅れていると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度の成果を踏まえ、中学生・高校生に対する質問紙調査の他、支援側として養護教諭や臨床心理士に対する調査にも取りかかる予定である。これらの調査によって、学校コミュニティにおける当事者と支援者の「援助の不成立」の経験の内容と心理・社会的背景を明らかにする。なお、質問紙の実施においては、今年度も新型コロナウイルスの影響は継続しているため、学校現場の負担にならないよう調整を行う。 また、10代の自殺未遂事例の 「援助の不成立」に対する当事者・支援者のナラティブ分析についても、並行してインタビュー調査に向け、医療機関等への依頼を行う。 得られた成果については、随時、学会発表や論文化を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大を受け、予定していた調査や打ち合わせのための出張費を使用しなかった。 次年度の研究費使用額については、中学校・高校の子どもを対象とした調査のための印刷代、郵送費等の費用を計上する。加えて、専門家討議の謝金の他、国際学会への成果報告のための英文校正、国内外の学会参加費も合わせて計上する。
|