研究課題/領域番号 |
20K14157
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
風間 惇希 三重大学, 学生総合支援機構, 講師 (70820364)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 過剰適応 / 青年期 / アタッチメント / 自律性支援 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,青年期の過剰適応を支援・予防する際の鍵概念としての『アタッチメント及び自律性支援ネットワーク』の提唱とその有効性を明らかにすることを目的としている。 2021年度は,主に本研究の中核をなす『アタッチメント及び自律性支援ネットワーク』に関する理論研究と青年期の過剰適応に関する論文執筆を行なった。 まず,『アタッチメント及び自律性支援ネットワーク』に関する理論研究については,アタッチメント理論の文献レビューと「自律性支援」概念に関連する養育態度研究や自己決定理論に関する文献レビュー,さらに,それらの由来が異なる概念をどのように一つの理論としてまとめることができるかの理論的考察を試みた。結果として,これまで主に幼児期・児童期の発達段階において,また主に子どもと養育者との関係に関して理論化されてきた「安心感の輪」理論や「安心感」概念が,『アタッチメント及び自律性支援ネットワーク』理論の構築にあたり一つの重要な示唆をもたらすと考えることに至った。一方,「安心感」の概念は,子どもと養育者以外の関係(例:友人関係,教師と生徒(学生)との関係)に関する知見,さらには青年期以降の発達段階を対象とした理論化が未だ十分に議論,検討されておらず,過剰適応研究を越えた重要な理論になる可能性がうかがわれた。 また,昨年度以前の調査データを用いた論文や誌上討論の論文執筆も行った。そのうち,今年度の業績として,青年心理学研究の誌上討論において,青年期の過剰適応に関する意見論文が採択,掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響を考慮し,今年度の実施を予定していた調査は,コロナ禍の状況が相対的に落ち着いていくという予測のもと,翌年度の実施に延期することとした。その代わり,今年度は本研究の中核をなす『アタッチメント及び自律性支援ネットワーク』の理論化に向けた研究活動に力を入れることができ,調査研究のための理論的基盤を固めることができた。その点で「おおむね順調に進展している」と評価することが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は実施計画通り,青年期全般に使用可能な過剰適応の測定尺度の開発を行なった。そして今年度は今後の研究を推進するための理論的基盤固めを行った。今後はそれらの実績を活用し,研究Ⅱ(青年期前・中・後期における過剰適応と重要他者との関係の中で機能するアタッチメント及び自律性支援との関連の検討)及び研究Ⅲ(重要他者との関係の中で機能するアタッチメント及び自律性支援がどのように過剰適応に影響するかに関する縦断的検証)の実施に向けた準備等を進めていく。また,これまでの調査研究の結果について,学会発表や論文執筆を引き続き継続していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は計画では調査を実施予定であったが,新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響が未だ大きく,他者との関係に関する内容を扱う本研究の調査に多大な影響が及ぶことが考えられた。一方,今年度の感染状況を鑑みると,翌年度は相対的に影響が徐々に落ち着いていく可能性が推測されたため,今年度の調査は次年度に延期するという判断に至った。その調査に係る予算が余ったため,次年度使用額が生じることとなった。
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