本研究では、成人期の未婚者が恋愛をどのように捉え、ライフコースの中でどのように位置づけているのか、そしてどのように恋愛をする(あるいは、しない)のかを明らかにすることを重要な問いとしていた。このために、生活史調査やフォーカス・グループ・インタビューを実施し、それらのデータを解釈するための理論的検討を行った。 成人期未婚者(とくに婚活者)の恋愛における悩みは、恋愛することを「支援する」情報の多様さや、その情報に縛られることによって生じやすくなっていた。加えて、恋愛することにおける規範(たとえば、アプローチは男性から、など)によっても悩みが生じ、それらの悩みは自分への評価を低める方向に作用していた。また、恋愛は、趣味、仕事、結婚といった生活領域のそのほかの要素との関係の中で位置づけられており、「(今後)必ずしなければならないもの」ではなく、「したいけど、できなかったら仕方がないもの」という達成目標のうちの一つとして位置づけられていた。このような位置づけは過去の恋愛経験(あるいは、他者の恋愛経験の聴取)から得られたもので、そのような経験の蓄積が恋愛することを難しくするとともに、恋愛したいという憧れを増す側面もあった。 成人期未婚者の恋愛の特徴の一つは、生活領域の要素の考慮事項の多さであると考えられる。すなわち、恋愛するとき、恋愛以外の生活領域の要素とのトレードオフが複数側面発生し、そのトレードオフを考慮することが恋愛することを難しくしていた。加えて、恋愛する際には相手も存在し、相手も同様に、生活領域の要素の考慮事項の多さを抱えている。このような二者関係を含めた視点から恋愛することおよび恋愛を支援することを捉えることが重要であると考えられた。 なお、本研究では、異性二者間の恋愛について検討しているが、恋愛には多様なかたちがあり、本研究はそれを否定するものではない。
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