これまでのうつ病教育は,「正しい知識とスキルを学べば,誰でも進んで身の周りのうつ病罹患者を援助できるようになるはずだ」という前提に立っていた。これに対し,本研究では,援助が大事だとわかっていても踏み切れない心の葛藤に着目し,その様相を明らかにした。また,うつ病の偏見を緩めようとする際に,メディア報道や教育の内容の選び方によっては十分な効果が得られないことを示した。さらに,そもそも「うつ病」という障害が複雑で多様なものであり,研究アプローチの切り替えが必要であることを示した。これらの知見は,従来のうつ病研究の前提を見直すものであり,社会に向けた教育のあり方を考え直すきっかけとなるものといえる。
|