研究課題/領域番号 |
20K14175
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
三宅 英典 金城学院大学, 人間科学部, 講師 (20826581)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 身振り / 発話 / 間接的要求 / 幼児期 / 統合的理解 |
研究実績の概要 |
本研究は,幼児期の間接的要求場面の理解における身振りの役割を検討することである。例えば,外遊びから室内に戻った時に手洗いをすることを直接指示するのではなく,「お外から帰ったら,みんな何をするんだったかな?」のように間接的に手洗いをする必要性を直接的ではなく暗喩的に示すような場面で,発話だけで伝える場面と身振りを加えて伝える場面を設定して,両者における幼児の間接的要求の理解について実験調査を行った。 本年度は,3歳児から6歳児77名を対象に,上記のような間接的要求課題を絵本で提示し,回答を求めた。絵本は保育者が園児に対して間接的要求を行う場面を描写しており,8つの場面によって構成されていた。幼児が絵本のなかの保育者が想定する要求内容を正しく回答することができたら2点,保育の文脈上,間違いとはいえない対応を回答した場合は1点とした。また,参加児の担任保育者に対して,KIDSスケールの理解言語・表出言語・対子ども社会性,対成人社会性に関する項目の回答を求めた。 その結果,幼児は学年が上がるほど,間接的要求課題の得点が高かった。また,間接的要求を発話のみで伝える条件よりも,身振りを伴って伝える条件の方が,間接的要求課題の得点が高かった。次に,間接的要求課題の得点とKIDSスケールの項目間で相関分析を行ったところ,間接的要求課題の「発話のみ条件」の得点は,理解言語・表出言語・対子ども社会性においてそれぞれ正の相関がみられた。一方,「身振りあり条件」ではこれらの項目と有意な相関がみられなかった。 以上をもとに,幼児期の間接的要求の理解には,発話のみで伝える場合,言語能力や社会性の影響を受ける一方,発話に身振りを加えた場合では,これらの要因が間接的要求の理解に影響しないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の感染拡大ならびに全国的な緊急事態宣言の影響,3密の回避などの状況下が継続しており,当初の研究実施計画より1年の遅れが発生している。今年度は,調査協力園での調査を行うことができたものの,依然として社会的な状況によって調査に影響が出る可能性が残されている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,身振りとして提示した絵本の刺激は静止画であったため,身振りが備えている動的な運動情報が含まれていない。そのため,今後は動画による身振りの提示を含めた課題の作成・提示を検討する必要がある。また,個々の発話と身振りの理解の個人差を捉えるために縦断調査を検討しているため,本年度に実施した課題を用いた継続調査などについても併せて調査協力園に相談の上,検討を続けていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症による社会的な影響によって1年目の研究活動で,予定していた調査等が実施できなかったため。そのため,およそ1年ほどの調査の遅れによって,その際に使用を予定していた使用額が生じている。 翌年度分の使用計画として,本年度で得られた知見を学会発表で広く公開するとともに論文化についても進めていく。その過程で生じる費用や大会発表の旅費等に充てる。また,実験課題の修正・新たな作成を必要とするため,これらの作成費用に充てる。
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