最終年度に当たる令和5年度は,研究1で順序多肢選択式問題に対して得られたデータを用いて,本課題の令和3年度に開発した誤答選択肢カスケード分析を実施し,選択状況の可視化を行った。その結果,順序多肢選択式問題の識別力が低い場合には,誤答選択肢カスケード分析による可視化が有効には機能せず,識別力の高い場合に解釈可能な選択パタンが出現することが明らかになった。この結果は,2023年8月に実施された日本テスト学会第21回大会で発表を行った。さらに,識別力の高低が順序多肢選択式問題の選択状況の可視化に及ぼす影響を検討するため,エントロピーを用いた分析も行った。その結果,識別力が高い場合には能力低群でエントロピーが大きく,高群でエントロピーが小さくなる傾向が見られたが,識別力が低い場合には,エントロピーの群間差は見られなかった。この結果は,2024年9月に開催される予定の日本教育心理学会第66回大会で発表する。 研究期間全体では,研究1を予定通り実施した後,得られたデータの分析を行った結果,計画していた後続の研究2・研究3の内容を変更するに至った。一方,研究1で得られたデータに基づき,順序多肢選択式問題で有効となりうる新しい分析手法を開発したり,その分析手法と順序多肢選択式問題の統計的性質との関連を明らかにしたりと,予定していた以上の成果が得られた。今後,研究2・研究3の実施の支障となっていた課題を解決すべく,本研究課題の着想を発展させた後継の研究課題を科研費にて実施する。
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