最終年度に実施した研究は次の3つであった。 第一に,昨年度までに作成した尺度(傾聴効力感尺度,援助要請を勧める効力感尺度)の妥当性を再検討した。概念的に負の関連があることが予想される外部変数(精神障害のある者に対する偏見や差別)との相関分析を行った結果,小~中程度の負の相関係数が算出された。また,約2週間の間隔を空けて各尺度を実施した結果,再検査信頼性係数は.65-.77であった。以上から,作成尺度は一定程度の妥当性を有していることが示唆された。 第二に,友人関係の取り方の違いによって,抑うつ症状を呈する友人にファーストエイド(傾聴,援助要請の勧め)を実行する自信の程度が異なるかを探索的に検討した。大学生を対象に質問紙調査を実施し,友人関係の類型を抽出するために潜在混合分析を,類型間の傾聴および援助要請の勧めに関する効力感尺度の得点差を検討するために分散分析を行った。その結果,自他を傷つけることを恐れることよりも,自己開示を優先する友人関係をとる群の各尺度得点が総じて相対的に低いことが示された。つまり,ファーストエイドに関する教育では,友人関係の取り方も考慮する必要が示唆された。 これらを受け,第三に,大学生を対象に抑うつ症状を呈する友人への初期支援に関する教育プログラムを開発し試行した。しかし,回収データが目標サンプルサイズに到達しなかったため,再度実施することとなり,その回収データも含めて現在解析中である。
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