研究課題/領域番号 |
20K14192
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
藤澤 美穂 岩手医科大学, 教養教育センター, 講師 (60625838)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 支援者支援 / 災害支援 / 心理職 / コンピテンシー |
研究実績の概要 |
本研究は、災害時において支援者支援に関わる職種のひとつである心理職(公認心理師、臨床心理士等)において、支援者支援に必要なコンピテンシーを明らかにし、その中でも重要となるキー・コンピテンシーを解明することを目的としている。 2020年度は、主に2つの調査に取り組んだ。 1)文献調査:本邦における災害支援者支援に関して、どのような内容がどのような方法でなされているのかを整理すること、そして実践課題を俯瞰することを目的に、心理職による災害支援者支援について、これまでの実践が報告された論文のレビューをおこなった。結果、これまで取り組まれた支援者支援内容として、心理教育等の知識提供型支援、ストレスマネジメント演習等の体験型の支援、体験グループやふりかえりの会などグループによる支援、等の実践が確認された。また、今後の支援者支援にあたっての実践課題として、支援者への知識・技術の提供、支援者のメンタルヘルスへのサポート強化および組織的対応、リラクセーション等身体からのアプローチの活用、専門用語を「翻訳」して伝えるスキルの向上、等を見出すことができた。また本検討を通し、本邦においては「支援者支援」の用語・概念自体の理解が不足している現状であることが明らかとなった。 2)災害時の支援者支援経験者へのインタビュー調査:災害支援者支援にこれまで関わってきた計5名の実践家に、その実践内容に関するインタビュー調査をおこなった。東日本大震災以降の災害支援に従事した支援者を対象に、特に支援者支援の実践内容と心理職との連携について尋ねた。2021年3月より調査を開始し、年度末までに4名のインタビュー聴取を終了した。残り1名のデータと併せ、質的検討を進める方針である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
心理職による支援者支援の文献調査は、予定通り進行することができた。 インタビュー調査について、当該年度中に終了する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響により、移動・面会をおこなうことが推奨されない状況となり、研究立案時に想定していた対象者への対面インタビューができなかった。これにより、新たなインタビュー対象者を、研究者から近距離の実践家に限定する等、対象者案の再リストアップをおこない、調査計画を修正した。そのため、研究の進行に若干遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
1.インタビュー調査の質的検討:インタビューデータについてテープ起こしをし、質的検討を進める。 2.心理職以外の対人援助職による支援者支援の実践に関する文献検討:2020年度は心理職による支援者支援の実践を整理した。今後は心理職以外の職種による実践について文献検討し、心理職との異同を検討することを通し、心理職による支援者支援の特徴を抽出する。 3.上記2項目を踏まえた、心理職による支援者支援のコンピテンシー項目の選定をおこなう。 4.コンピテンシー項目に基づいた質問紙調査とその分析、コア・コンピテンシー項目策定のための分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査、研究打ち合わせ、情報収集のため、旅費ならびに「その他」として会場賃借料を計上していたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、他県移動を伴う対面調査・打ち合わせ・情報収集をおこなわなかったため、残額が生じた。またインタビュー調査の対象者選定基準の変更に伴い、分析作業に遅れが生じたため、テープ起こし等の謝金支払いに至らず、残額が生じた。 次年度も少なくとも上半期は、当該年度と同様の感染予防策が必要と見込まれるため、旅費の残額は大きくなる見通しである。
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