研究課題/領域番号 |
20K14193
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研究機関 | 和洋女子大学 |
研究代表者 |
矢口 大雄 和洋女子大学, 人文学部, 助教 (10826655)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 高齢者 / 粘土対話法 / 発話行動 / 心理学的意味 / コミュニケーション / 心理的支援 / 脳活動計測 / NIRS |
研究実績の概要 |
令和5年度は、高齢者施設に入居する高齢者34名と施設職員7名を対象に調査を実施した。本調査では、高齢者2名と施設職員1名を1組とし、粘土対話法と他のレクリエーション活動時のコミュニケーション変化について、心理・行動・生理的指標より検討を行った。心理指標においては、調査実施時の対話内容を心理学的意味に分類、行動指標では、発話行動とアイコンタクト回数を測定、生理指標では、脳活動計測装置により脳血流変化を測定し、それぞれの条件間の差を比較した。その結果、複数の指標により粘土対話法を導入することで、他のレクリエーション活動時と比較して高齢者間と施設職員のコミュニケーションが有意に活性化することが示された。そのため、高齢者施設において粘土対話法を導入することで、高齢者施設入居者のQOL(生活の質)を向上させる心理的支援策になることが期待できると考えられる。 高齢者施設においては、年齢や生育歴、職歴などの個人特性や認知機能や身体機能の程度に差がみられ、高齢者間でのコミュニケーションが図りにくいことが想定される。また、施設職員においても、心理的支援に関する知識や技能の習熟度によって、心理的介入が難しいことも考えられる。そのため、高齢者臨床における心理的支援策を検討するうえでは、知識や技能の習熟度に左右されない効果的な支援が求められるといえる。本研究においては、生理指標である脳活動計測装置を用いて、高齢者間と施設職員のコミュニケーション時の脳血流変化を客観的に評価したことで、今後の高齢者臨床における心理的支援策の開発に寄与できるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、高齢者施設において調査を実施することを予定しており、研究計画を遂行することができた。調査結果の分析についても同様である。しかしながら、研究成果の公表には至っていないため、学会発表や学術論文の掲載を通して、高齢者施設における心理的支援策としての粘土対話法の有用性を周知する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、本研究の成果を学会発表や学術論文の掲載を通して公表することを予定している。そのため、学会発表や学術論文の掲載に向けた準備を進めることを予定している。本報告の執筆時点では、調査結果の分析をおおむね終えているため、今後は調査結果の公表を円滑に進めることができると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、高齢者施設での調査実施を当該年度に変更したため、調査結果の分析ならびに研究成果の公表時期が変更になった。そのため、当該年度の未使用額を次年度に繰り越すこととし、申請時の計画内容に沿って研究を実施する予定である。
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