令和4年度は,ひきこもり機能タイプの変化がひきこもり改善プロセスに及ぼす影響をプロスペクティブに検討するために,前年度から開始した1年間のフォローアップ調査の6ヵ月調査および1年後調査のデータを収集した。その際,ウェブベース調査において,社会的交流の程度や精神的健康,セルフコンパッション,ソーシャルサポート等を測定する質問紙への回答を求め,ベースライン調査で協力を得た,ひきこもり状態にある人500名に調査を依頼した。ベースライン調査から1年後においては,364名から回答を得た。 時期を独立変数とした一要因分散分析の結果,ひきこもり機能はいずれの因子においても有意な差異は認められず,一貫した傾向を示した。その一方で,ベースラインと比較して,6ヵ月後および1年後において社会的交流行動は高い得点を示し,1年後において主観的機能障害は低い得点を示した。また,ベースライン調査におけるひきこもり機能因子を独立変数とした重回帰分析の結果,ベースラインの主観的機能障害を統制後,1年後の主観的機能障害に対しては,ひきこもり機能における社会的負の強化が有意な正の標準化推定値を示し,自動的正の強化は有意な負の標準化推定値を示した。これらの結果は,ひきこもり機能タイプが1年後の主観的機能障害を予測する可能性を示しており,さらにひきこもり機能タイプによってその傾向が異なることを示唆している。 また,令和4年度は,実施済の研究の一部をまとめた論文に関して,査読に応じた修正をして再審査中である。
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