研究課題/領域番号 |
20K14205
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
森 朱美 (大杉朱美) 福山大学, 人間文化学部, 講師 (10847817)
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研究期間 (年度) |
2021-02-01 – 2025-03-31
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キーワード | 隠匿情報検査(CIT) / ポリグラフ検査 / 情報検出 / アーチファクト / カウンターメジャー |
研究実績の概要 |
日本のポリグラフ検査は、隠匿情報検査と呼ばれる情報検出技術を採用し、今日の犯罪捜査に広く活用されている。科学的鑑定として国内外の専門家から信頼されている検査であるが、その判定結果に大きな影響を及ぼすと指摘されているのが、体動等から生じるアーチファクト(データに混入するノイズ)の問題である。日本では、従来から目視によりアーチファクトの有無が判断されており、アーチファクトが混入したと考えられる試行に対する判定については鑑定人の経験に任されている部分が大きい。加えて、数あるアーチファクトが様々な自律系反応にどの程度影響を及ぼすのかを体系的に検討した研究は少なく、アーチファクト自体の検出、さらにはアーチファクト成分のみを除去した生体データの利用可能性の可否を検討した研究は皆無である。本研究は、①様々なアーチファクトの影響を可視化し指標ごとのデータベース化を図ること、②現行の実務ポリグラフ検査に実装可能な、有効性の高いアーチファクト検出システムを構築すること、さらに③アーチファクト成分のみを除去する手法を考案し、除去後の生体データの利用可能性を検討することを目的とするものである。 2022年度は、一昨年同様、①に該当する実験として複数のアーチファクトが自律神経系指標にどのような影響を及ぼすかを検討し、データの収集を行った。新型コロナウイルス感染症の影響で実験の遂行が遅れ、データベース化にはまだ不十分な状況ではあるが、遅れながらも一歩ずつ実行している状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で、実験の実施ができない期間が存在したこと、また感染症対策に伴う他の業務の増大により研究遂行の時間確保が困難であったこと、機材の試用や納入に時間を要したことが、研究の遂行を妨げた大きな要因である。本研究は、被験者に触れセンサーを装着し、生理指標を測定することが必須となっており、かつ実験が長時間にわたる実験を要するものである。したがって、適切な感染対策を行うことができる環境の確保について、通常以上に慎重な判断を要した。また、新たな資機材の導入の必要性が生じた際に、コロナ禍による材料の不足や業者の対応遅れ等が発生し、迅速な購入ができない状況となったこともあり、計画通りに進行できなかった。少しずつ進行しているものの、その進行スピードはやや遅れていると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
遅れが生じた計画を立て直し、迅速なデータの収集を行う予定である。各アーチファクトのデータベース化に努め、さらに現行の測定方法のままで実行可能なアーチファクト検出システムについて検討を始める。具体的には、呼吸の解析方法を工夫したり、心電図に着目し、特定のフィルタを使用したり、特定の分析方法を用いてECGとアーチファクトを分離する方法の適用可能性を検討する。各アーチファクトがどの程度心電図に現れるのか、それをどの程度の強度で検出可能なのかを精緻に分析し、アーチファクト除去後の生体データの利用可能性についても合わせて精査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度は、生理指標の分析に際し新たな装置及びソフトの購入が必要となり、その購入に多くの助成金を費やす形となった。予備実験を繰り返しながら、そのソフトの運用を軌道に乗せる必要があり、他の助成金使用に計画の遅れが生じた。そのため、次年度の計画を修正し、前年度分と次年度分と合わせて適切な予算執行ができるよう努めたい。次年度は、新たなアーチファクト検出システムの可能性を検討するため、現在の設備にない座圧センサを購入する必要がある他、アーチファクトの生起をリアルタイムで確認する必要から行動確認用のビデオカメラと液晶モニタが必要となる。また、研究を効率よく遂行するために、学生による研究補助が必要な状況であることから、謝金の支払いが生じる予定である。
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