研究課題
本研究の目的は、日本在住の外国人児童生徒のウェルビーイング(心身ともに良好な状態)に関する包括的なアセスメントモデルを構築し、外国人児童生徒の支援者への提言を行うことにある。補助事業期間内には、1)文献研究、2)ウェルビーイングに関する縦断研究、3)投影法による心理アセスメント研究を行うことを計画している。2020年度は上記のうち、1)および2)に関連する研究に着手した。1)文献研究については、外国人児童生徒のウェルビーイング研究や心理アセスメント研究に関する国内外の文献を収集し、研究動向や今後の課題を整理した。また、2)ウェルビーイングに関する縦断研究については、昨今の状況を鑑み、児童生徒への調査は次年度以降に持ち越すこととしたが、本研究課題の関連研究として、文章完成法(Sentence Completion Test: SCT)を用いて日本人児童、フィンランド人児童およびモンゴル人児童の主観的幸福感の様相を比較検討した結果を海外雑誌に投稿し、採択に至った。児童の主観的幸福感研究において投影法を取り入れ、質的な側面から主観的幸福感の構成要素について検討したことや、海外児童との比較を行ったことにより、日本人児童の主観的幸福感の様相をより詳細に明らかにすることができた。この研究によって得られた成果は、今後、日本在住の外国人児童生徒のウェルビーイングの様相を明らかにするうえでの基礎資料になるものとも考えられる。
4: 遅れている
外国人児童生徒のウェルビーイング研究や心理アセスメント研究に関する文献収集を進めることはできたが、1回目の縦断調査を実施することができなかったため、当初の研究計画よりも遅れている状況にある。
今後は外国人児童のウェルビーイングに関する縦断研究および心理アセスメント研究の計画をより精緻化し、調査実施に向けての準備をを進めていく。その際には、昨今の学校現場の状況を十分に把握したうえで、可能な限り調査に伴う負担が少なくなるように、研究計画を一部見直すことも検討する。得られた成果は国内外における学会発表および論文投稿等により公開する。
次年度使用額が生じた主な理由としては、1)成果発表等のための国内外旅費が発生しなかったこと、2)調査実施やデータ分析が次年度以降に持ち越しとなったため、関連する人件費・謝金が発生しなかったことが挙げられる。これらについては、今後の使用額と合わせて、国内外旅費、調査実施やデータ分析に関わる人件費・謝金等として使用することを計画している。
すべて 2021 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Child Indicators Research
巻: 14 ページ: 871-896
10.1007/s12187-020-09776-y