研究実績の概要 |
今年度は、自己注目を誘発する環境側の刺激を明らかにするために、生態学的経時的評価法 (Ecological Momentary Assessment: EMA; Shiffman, Stone, & Hufford, 2008) を用いて、日常生活の社交場面で知覚される様々な刺激と自己注目との関連性を検討した。 Liebowitz Social Anxiety Scale 日本語版 (LSAS-J; 朝倉他, 2002) が30点以上の大学生と大学院生22名を対象として、WebアンケートによるEMA調査を10日間実施した。具体的には、アンケートのURLが記載されたEメールを1日3回参加者に送信し、回答時から過去5時間以内に経験した社交場面、社交場面で知覚した9個の刺激、自己注目の程度について回答を求めた。調査の結果、分析対象となる321回分の回答が得られた。各刺激を独立変数、自己注目を従属変数としたマルチレベル重回帰分析等を行った結果、「他者からの視線」、「他者からの評価」、「権威のある人」が知覚されると身体感覚への自己注目が生じやすく、上記に加えて「知り合いの人」が知覚されると観察者視点による自己注目が生じやすいことが示された。特に視線については、視線への恐怖度に関わらず、2種類の自己注目を高めることが示された。 本研究課題では、自己注目が生じやすい刺激をあえて呈示し、その中でも注意を柔軟にコントロールする訓練を行うバーチャルリアリティ (VR) のプログラムを開発することを最終目標としているため、今年度の研究によってVR空間を設計する上での有用な知見が得られたと考えている。
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